右ちゃん、元気ですか。木曜とかたまには飲もうよ。
5月にしてはくそ暑い浅草の雑踏を歩いていると携帯のチャイムが鳴った。
高田あきこからのメールだ。あきこか。あーめんどくせ。とはいえ、ビールはいいかもなー。
右田は右手一本でささっと返信を書いた。
前に飲んだ御徒町の居酒屋さん覚えてる?あそこでOK?
すぐにチャイムが鳴りあきこからの返信が届いた。
右ちゃんの誕生日の時の?うん。楽しみにしてるねー。
あきこの返信内容だけ確認すると、右田は返事もせず携帯を胸にしまった。
ぼちぼちこいつもしっかり仕込んで、金を持ってこさせないとなー。
右田はインチキ教材のパンフレットが詰まったカバンを抱えなおし
アポを取り付けた家を目指した。
右田恒夫は34歳、既婚子なしで赤羽のアパート住まいだ。
若い頃の勢いで結婚したものの、右田の夫婦仲はとっくに冷え切っている。
そもそも働いたり働かなかったりの右田のいい加減ぶりに
妻があきらめているというのが実情だ。
そんな妻の愚痴が面白くないので右田はあまり家にも帰らない。
妻は看護師で勝手に生きていけるって寸法だ。
俺なんかなんぼのもんでもねぇ
それが右田の考えだった。
公団生まれの公団育ち。
高校は適当に進学高校に進んだものの、ワルに憧れてドロップアウト。
それでも何とかFラン大学に滑り込んだが、そこではパチンコ三昧。
いっそヤクザになるほどの度胸もなく、日々日々のんべんだらり。
大学卒業間際に工場勤めの親父がおっ死んでも更生なんかしない。
唯一、親父の保険金に手をつけなかったことだけは立派かもしれない。
もうお袋はお袋でやってけや。
御徒町の宝石商になんとか潜り込んだ右田は意のままに動き回った。
生来の口の上手さと、見かけの良さだけが右田の救いだった。
その宝石商ではそこそこの成績を上げ右田は異例の昇進を果たした。
妻と出会ったのもその頃だ。
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