(ナンパ? あ、これもしかして出会い系の待ち合わせ?)

藤田恵理子は車窓に映る自分の髪型を確認しながら電車に乗り込んだ。
5月の東西線は立つ者の姿も少なく、ぽつぽつと席が空いていた。
恵理子は車両の一番端まで移動し席に座った。
斜め向いではギャル二人が賑やかに話をしている。
余程楽しいのだろう。笑いころげていた。
若いねえ。いいねえ。あたしもあのノリかな。
席に着くと恵理子はスマホを取り出し
LINEで宮本孝一にメッセージを送った。
今日は楽しかった~

ありがとう~

メッセージはすぐに既読になり
俺も。今日はありがとう。
という短文のメッセージとニコニコのスタンプが戻ってきた。
それ以上はまいっかと恵理子はスマホをバッグに仕舞った。
恵理子は今日の孝一とのセックスですっきりした気分になっていた。
孝一との出会いは1ヶ月前、銀座の座れる本屋でのナンパ(?)からだ。
その日、夜勤明けの休日だった恵理子は銀座へ買い物に出かけた。
GAPで小物をチョイスし、三越でウインドウショッピングして
本屋でファッション誌を読みながら休憩をしていた。
そこへ孝一がやってきた。
その時の孝一の服装は黒のスーツにノーネクタイ、
襟に細い柄の入った白のボタンダウンシャツを着ていた。
髪はキムタクのように長く、浅黒い顔は引き締まっていた。
その孝一が丸ソファの周りを行ったりきたりするものだから
気になった恵理子が顔を上げたところで2人の視線がぶつかった。
待ち合わせですか?
孝一が遠慮がちに小声で聞いてきた。
年は30を越えたくらいだろうか。めっちゃ恵理子の好みのタイプだ。
孝一はスマホを右手に持ち、やたら視線をスマホに送っている。
(ナンパ? あ、これもしかして出会い系の待ち合わせ?)
周りを見渡すと、どうもそれらしい女性が見受けられる。
というか恵理子には全ての女性がそうじゃないかと思えてきた。
(こんな格好いい人も出会い系するんだなあ)
それが恵理子の素直な感想だった。
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