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2016/03/21

玲奈はこの1年の間、揺らめいた自分の人生を振り返り始めた



5月の夜、吉川玲奈は東西線に揺られていた。
金曜の夜だというのに車内はさして混雑もしておらず、玲奈は茅場町から席に座ることができた。
昨年末に32歳の誕生日を迎え、来月にはジューンブライドを迎える玲奈であったが、今日は最後の楽しみとして年下の桜井高志と日本橋のワインバルで魚介とワインを楽しんできたのだった。
楽しかった・・・
これで思い残すことはない。玲奈は耳にイヤホンをかけ、スマホから選曲を行うと、体を縮めて小さくうつむき、更に目を閉じて音楽に集中しようとした。
ふと鼻の奥から粘液が垂れてきたような気がして軽く咳き込むと、玲奈の鼻腔に青臭い漂白剤のような香りが広がった。
暖かな電車の揺れの中で今夜の余韻を楽しもうとしていた玲奈だったが、その淫靡な香りは否応なしに玲奈の思考を乱した。
自分で選んだんだから問題ない。問題ない・・・
玲奈はこの1年の間、揺らめいた自分の人生を振り返り始めた。

・・・

年間売上6兆円。単独では3万人、連結では19万人の社員を抱える日本を代表する大企業。
玲奈は一般職とはいえ、その日本を代表する企業の本社ビルに勤めている。
東京湾を見下ろす形で立つ本社ビルは地上40階、地下3階の立派なもので、玲奈の机は31階のフロア、社会インフラ事業の一部門にあった。
2つのタワーを繋いだ形のビルの構造上、全てを見渡すことは出来ないが、かつては31階のフロアだけでも100人以上の人間が働いていたはずだ。
それが今や、部門の統廃合や離散集合が繰り返され半数近くになってしまっていた。
ある者は希望退職に応じて去って行き、ある者は自主的に退職し、またある者は子会社に出向を命じられ去ってしまっていた。

それもこれも去年の夏、会社の粉飾決算が露呈してしまったためだ。
日本を代表する企業の粉飾決算。各紙とも一面を飾るビッグニュースだった。

その記事が新聞の紙面をにぎわせ始めた頃、玲奈にはまだ粉飾決算というものがどれほど悪いものか分からなかった。
だが周りの賢い総合職の立ち話を聞いていると、まず証券取引所での株の取引停止は免れない。
次に銀行から取引停止、融資の引き揚げが宣言され、資金がショートして会社の倒産は免れないだろうということであった。
大方の人間の話では、もって3ヶ月であろうという予想にも関わらず、奇跡的に会社は生き延びていた。

Too Big To Fail かつてのダイエーがそうであったように、この会社は大きすぎて潰せないという国の意向から、様々な公的支援、資金が投入されたのだ。
そのため、少なくとも玲奈の日々の業務には変わりはなかった。
しかしながら会社自体が無傷というわけにはいかない。
先に書いたように部や課の統廃合や人的整理が頻繁に行われ、役職が消えたり人手が足りなくなった部門には改めて若手が起用されるなど、かなりダイナミックな人事が行われた。

そんな中、28歳の桜井高志が主任として異例の若さで玲奈の部門にやってきたのは昨年秋のことであった。
 
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2016/03/20

昨年、会社の粉飾決算が新聞で報じられて以降、社内は揺れていた



昨年の夏、会社の粉飾決算が新聞で報じられて以降、玲奈の属する部の愛すべき部長、秋月はことあるごとに「この部が潰れることなどあり得ない」と安心を強調していたが、残念ながら若手の社員は早々に会社に見切りを付け、多くが同業他社に移っていった。
そもそも粉飾決算の記事として最初に取り上げられたのはインフラ事業の進捗と決算に対する不透明性であったし、また社会インフラ事業本部長は取締役でもあったため、この粉飾決算の罪に連座して、次の株主総会では役員の座から引きずり降ろされるであろうことは誰の目にも明らかだった。
つまり下手をすれば事業本部ごとなくなる。
若手にしてみれば沈み行く舟に付き合う必要はなく、少しでも自分の値段が高いうちに他社に売りつけるべしという合理的な判断が働いたに違いない。

しかし大方の予想に反して、インフラ事業本部は潰れず、秋月部長の宣言どおり玲奈の属する部も御取潰しという事態を免れた。
Too Big To Fail様様である。
そこで部自体が存続しても、事業をこなすための人材が足りないということで、隣のタワーの社会インフラ事業部門から桜井高志が回されてきたのだった。

タワーのあっちとこっちとはいえ、玲奈は桜井のことを見知っていた。
いや玲奈に限らず31階の女子社員は、一般職、総合職を問わずに桜井高志のことを知っていただろう。
玲奈くらいの年になると全社的な女子ネットワークには参加できない。
そのためどこまで桜井が有名なのかは分からないが、少なくとも社会インフラ事業部門の女子社員の間では桜井は”翔君”と呼ばれ、密かに親しまれていたのだった。

名前が桜井で、顔が可愛く、若くて、話も面白い、仕事も出来るとなれば、芸能人に例えたくなる気持ちも分からないではない。
31階の女子社員は”翔君”が部を移動したということで、2日程度色めき立っていたが、その噂話もじきに盛り上がりを削がれていった。
人のことよりも結局は皆自分のことが大事なのだ。突然、移動を言い渡されるのではないか。肩を叩かれるのではないか。
女子社員、特に日ごろ噂に一喜一憂する一般職の女子社員には、そちらの方が気になっていたのである。

一方、玲奈にしてみれば”翔君”のことも退職勧告も、さして気にはならなかった。
玲奈はその時点で6月に結婚することが決まっており、5月末に退職することも秋月部長まで伝わっている。
幸いに玲奈の婚約者は同業者でもなく、どっちに転がっても生活は安定しているのだった。
披露宴に呼べる人が減るなーという悩み以外は、男も肩叩きもどうでも良いことだ。
 
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2016/03/19

怜奈の大好きな上司、秋月部長との思い出



お、吉川さん今日はお弁当かい?

そろそろ師走の慌しさが漂い始めた12月の初旬、自分の机にお弁当を広げた玲奈に秋月部長が話しかけてきた。
事業本部長クラスであれば別階に個室を与えられているが、部長クラスでは各部のシマの頭に社員に向いた形で机が並べられているのが普通である。

母がお弁当作る練習くらいしなさいって。電話でうるさいんです。

玲奈は秋月の机の方を振り返り、笑いながら答えた。
玲奈は入社して10年になるが、秋月は玲奈が入社したときから既に部長であった。
仕事には厳しいが、温厚で部下に対して無理強いも、ごり押しもしない。それでいて納期も質もコントロールする。部下には気楽に話しかけ、逆に自分が道化になることも厭わない。
秋月は玲奈にとって理想的な上司だった。

部長もお弁当なんですね。
うん。なんか僕らの給料も厳しくなるみたいだしね。

秋月が冗談めかして言ったが、それはあながち冗談ではないだろう。会社の現金がショートしてくると賃金カットが行われるのは常道である。それも高給取りの上の方からというのは更に常識的な考えである。

お茶入れてきましょうか?

気を利かせて玲奈が言った。一般職とは言え、玲奈くらいのキャリアを積んだ女子社員がお茶を煎れるなどということはあり得ない。これは単純に玲奈の好意の表れだった。
もっとも給湯室まで行くつもりはなく、各階に設置された無料の給茶機でカップに緑茶を注いでくるつもりだったのだが。

いや。いいよ。この前、女房と京都を旅行したときに玉露を買ってね。

秋月がステンレス製のボトルを手にとって示した。

これだと酸化しないみたいで、お昼でも甘い渋いのが飲めるんだよ。
京都ですか。いいなー。しばらく行ってないです。
もうすぐ還暦だって、息子からのプレゼントでねえ。

秋月が嬉しそうに笑い、お弁当を食べ始めた。
秋月の笑顔には破顔という言葉がよく似合う。頬や目じりの皺すら歴史を感じさせ好印象だ。
東京マラソンにも何度か出たという痩身で引き締まった体つきと合間って、部下のみならずお客様にも安心と信頼を与える男の顔だった。
40年近く第一線で働き続けると、男の顔はこうなるのだろうか。
いや、そうではない。玲奈は他の部長や本部長とも多少の交流はあった。
それでも秋月ほど人を惹きつける役職には会わなかった。
秋月の魅力は、彼特有のものなのだ。

そんな秋月が退職するという話が1月中旬に流れはじめた。
 

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2016/03/18

秋月部長の送別会



・・・という訳で、僕も誕生日を迎えれば規定どおりの定年退職だ。だから誰も恨んじゃいないし、幸いにも子会社が役員として迎えてくれることになってる。だから僕のことなら心配しなくていい。これから期間一杯、受けている仕事に関して引継ぎはしっかりやる。残していく君たちには大変な苦労をかけると思う。ましてや会社がこういう時だからな。ただ、忘れないで欲しいのは1つ。今、会社の状況が大変で、世間からも逆風が吹いている。それでも、僕たちがやってきた仕事は、これまでもこれからも世の中に求められ、その成果は人々の生活を豊かにしてきたということだ。我々は会社云々ではなく、世の中の人の役に立っている仕事を行っているんだという、その一点を心に留めて、皆にはこれからも仕事に邁進して欲しい。

秋月部長が壇上でライトを浴び、集ってくれた人々に最後の挨拶をするのを玲奈は会場の端から眺めていた。

秋月部長が本社を退職するのではという噂はあっと言う間に社内に広まった。
部下を代表して直属の課長が秋月に確認を取り、本当だと分かると3月の頭に急遽、内々での送別会が開かれることとなった。
内々とは言っても本社の部員全員に、地方からの参加者、隣の部から、昔の部下から、部長の同期、他の部の部長までわれもわれもと参加を希望し、当日の飛込みまで含めると60人以上が集う大パーティとなった。
この会の主幹事は秋月から聞き出した課長が務めたが、副幹事を仰せつかったのが桜井高志と玲奈だったのである。

いや、大変でしたねえ。

送別会が終わると主幹事である課長は「後は任せた」と玲奈と桜井の二人を残し、秋月部長と同期クラスが流れた二次会に合流してしまった。
残された桜井と玲奈は最後の客を見送り、会場となったホテルとの人数確認を終え、後日清算の段取りを終えて、やっと大役の任を解かれたところだった。

桜井さんもお疲れ様でした。

手を添えてお辞儀をした。玲奈は基本的に年下であろうが総合職には敬語を使う。
しかし今は桜井に対して尊敬の念を持って敬語を使うことが出来た。

実は、桜井が移動で今の部署に移ってきたとき、玲奈は桜井を過剰に評価された若い子と見ていた。
しかし、ここ数ヶ月の桜井の働きぶりを見て、玲奈は桜井をすっかり見直していたのだ。
一般職の玲奈から見て、総合職、特に本社に勤める総合職は本当に優秀な者の集まりで、仕事はできて当たり前だ。
仕事の出来ない総合職など、そもそも本社にいる資格はないのである。
その意味では桜井は非常に手際がよく、前任からも上手に仕事を引き継ぎ、既存客との交渉もうまく、仕事は順調に回っていた。

ただ、それプラスアルファ。自分の担当の仕事以外の部分でどれだけ人のために動けるか。今まで様々なタイプの総合職を見てきた玲奈からすれば、これが会社の中で上に行ける人間かどうかの分かれ目と見ていた。
ライバルを叩き潰すような手法は今風ではない。少なくとも社内の人間を敵に回すようでは、上に行く目はないのだ。
そういう意味で、自分の仕事もこなしつつ、秋月のこの会のために、嫌な顔の一つもせずに副幹事をやり通した桜井は、玲奈の中で抜群に評価を上げていた。

いやー。これだけの人数が集まるなんて、秋月さんの人徳ですねえ。
本当に。今更ながら凄い人の下で働いてたなあって思いました。
取引先の人まで参加させて欲しいって言うんですから。
そうでしたねえ。お断りするのも申し訳ないようで困りました。

ロビーを歩きながら会話し、ホテルの出口の回転扉までやってきた。とその時、桜井が言った。

吉川さん、幹事が気になってあまり食べることが出来なかったでしょう?
僕もお腹が空いちゃって。良かったら一緒に食事どうですか。

大役を無事こなした達成感からか、戦友に向けての好意か、桜井が満面の笑みを伴って言った。
なるほどこれがみんなの言う”翔君”か。なるほどこの笑顔には参るね。
玲奈もつられて満面の笑みを携え「はい」と答えた。
 
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2016/03/17

”翔君”とワインバルで幹事打ち上げ



銀座だと僕の給料じゃ厳しいですと言う桜井と連れられて日本橋まで移動した。
日本橋は高田馬場方向に戻る桜井にも、西船橋方向に戻る玲奈にも都合が良かったからだ。
桜井が案内してくれたのは、大通りから一本路地に入った隠れ家的なワインバルだった。
金曜の21時台のことである。
隠れ家的といっても店内はそれなりに混んでいた。
桜井は店員に来店を告げ、二言三言会話を交わすと、二人は半洞窟のように区切られたテーブルに案内された。
どうも桜井は馴染みのようである。

仕事の帰りにたまに来るんです、ここ。いつもはカウンターですけどね。

玲奈が席に着くと、桜井がにこやかに言いながら席に着いた。
狭いテーブルに向かい合わせの状態である。

さてと。吉川さんはワインは大丈夫ですか。
ええ。お酒はなんでもいけます(笑)
頼もしいですね(笑) じゃあ、ハウスワインも良いですけどフルボトルを入れちゃいましょう。赤と白は?
お任せします。
じゃあ白かな。あとは、苦手な食べ物とかありますか。
大体なんでも食べられるほうです。
じゃあ適当に頼むんで、足りなかったら後で追加で良いですか。
はい。初めてのお店ですから、桜井さんにお任せでお願いします。
分かりました。じゃあ美味しいものをご紹介しないと。

桜井が洞窟の入口から手を出し店員に声をかけると、黒い前掛けをした南欧系の店員が飛んでやってきた。
桜井はメニューを片手に一つ一つ指差しながら、たまに店員の顔も確認しつつてきぱきと注文を進めていった。

えーっとワインはこれ。フルボトルで。OK? それから生ハムの盛合せとサーモンカルパッチョ。スパニッシュオムレツに、手羽先のフリット。あとはビスマルクピッツァと魚介のパエリア。こんなもんかな。
え、そんなに食べられませんよ。
大丈夫、大丈夫。

注文を終えるとワインは直ぐにやってきた。テーブルにグラスが置かれ、一杯目は店員が注いでくれた。
後はワインクーラーに入れておくので勝手にやってくれというスタイルのようだ。

ふーんと銀のワインクーラーを眺めていると桜井がグラスを手に取ったので、玲奈も慌ててグラスに手を伸ばした。

それじゃあ、無事に幹事を務めあげたことに。
務めあげたことに。
カンパーイ

軽くグラスを合わせた。コーンというワイングラス独特の深みのある音が響く。
玲奈は軽くワインを口に含むと、喉に流し込んだ。
よく冷えた淡い琥珀の液体が喉を滑り落ちていく感触が心地よかった。

あー。これ美味しい。
でしょう。当たりもきつくなくてスッキリと喉に流れ込んでいく感じ。でしょ。

確かに。若そうなワインだがフルーティというほど甘くもなく、しかし喉を滑り落ちた後に鼻を抜けてくる爽やかな香りが鮮烈で、これならいくらでも飲めそうだ。
きっと舌に残った肉や魚の味もさっぱりと洗い流し、次の一口へと導いてくれるだろう。
玲奈は桜井のチョイスに感嘆した。
玲奈の驚きの表情に満足したのか、桜井も饒舌に話し始めた。
楽しい打上げになりそうな予感を感じさせた一杯だった。
 
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2016/03/16

ワインバルでの二人はまるでデートのように・・・



玲奈は桜井の健啖ぶりに舌を巻いていた。
桜井はとにかく食べる。そしてぐいぐい飲む。それは見ていて気持ちのいいものだった。
料理が届く。二人で取り分ける。桜井がバクバク食べる。次の料理が届く。前の取り分けた残りを桜井が口に放り込む。
まるで少年だ。名前はなんと言ったか、こんなに嬉しそうに給食を食べる男の子が小学校の時にいた。
玲奈は味見程度に沢山の種類の料理を試したかったので、桜井の健啖ぶりはむしろ好都合だった。
しかも、桜井の食べ方は綺麗で嫌な感じがしなかったし、話をする時間もちゃんとあった。

ワインが2本目に入った頃、頼みすぎだと思った料理は既に片付き、会話はループして何度目かの同じ話になった。
玲奈も桜井もワインが進んだせいか、それとも打ち解けたせいか、敬語が怪しくなっていた。
玲奈はそれすら快く思っていた。

いや、今回は本当に吉川さんがいらしたので、助かりました。
ホテルとの交渉とか桜井さんが全部動いてくれたから、私のほうが感謝です。
ああ、そこは課長が忙しい身ですから。僕がやるしかなかったわけです。
たしかに、課長はやりませんからね(笑)
僕は部内の人間関係をまだつかみきってませんから。そのフォローが・・・
そんなことはないでしょうけど。
部内については吉川さんから話をしてもらって流れができたんです。
私は長いですからねー。
僕は新人で・・・あ、いや、そういう意味じゃなくて。

すみませんとおどけた様に小さくなって桜井が謝った。
玲奈は手を振り笑って許したが、桜井は慌てて話題を変えてきた。

長いって言っても玲奈さん、もうすぐ結婚じゃないですか。

社内の話はどうしても湿りがちになると思ったのか、話題は玲奈の結婚についてだった。
しかし、ほんのさっきまで吉川さんと呼んでいたのに、桜井は玲奈と呼んだことに気がついていないようだ。

玲奈さん?
ああ、すみません。吉川さんです。吉川さん。
なんかさらっと出てきたけど(笑)
すみません。
裏で密かに呼んでた?
会社だとセクハラって言われそうですね。
まあ、会社だと下の名前で呼ぶことはしないよねー。
でも玲奈さんは玲奈さんの方がしっくり来るんです。

開き直ったのか桜井は悪びれずに言った。
いたずらを見つけられた子どもが拗ねているようで、それはそれでなんだか可愛かった。

じゃあ私も今日は”翔君”って呼ぼうか。
あーそれよく聞きますけどねえ。僕、高志ですから。
タカシ? いやそれはちょっとなんだか恥ずかしいなあ。
一回、言ってみてくださいよー。玲奈さん。
タカシ? いや、なんか弟みたいじゃない。

玲奈は桜井の好意を感じていた。幹事という大役を二人でこなした吊橋効果かもしれない。
玲奈も桜井に好意を感じ、なんだかんだとデートのような時間が過ぎていった。
 
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2016/03/15

玲奈はテーブルに身を乗り出し唇をんーと突き出した



まだ東西線の最終には間に合いそうだった。
2本目のワインも空きいよいよお開きかなという頃、玲奈はテーブルに身を乗り出して目を瞑り、唇をんーと突き出した。
互いの好意を確認する程度のイタズラのつもりだった。
もちろん素面ではこんなことはとても出来ないが、なにぶんワインで気が大きくなっていたし、半洞窟の中でキスくらいしても誰にも見咎められることはない。

チュッと桜井の唇が触れたのが分かった。
玲奈がそれだけで身を引こうとしたとき、後ろ頭が押さえられて、桜井の舌が強引に玲奈の唇を割って入ってきた。
だが、強引にというのは玲奈の勝手な言い分かもしれない。
玲奈の後ろ頭を押さえた桜井の力は首を振って逃げられない程のものではなかったし、唇を噛み締めさえすれば舌の進入する余地などありえないからだ。
つまり怜奈は自ら応えたのだった。
それどころか桜井の舌が玲奈の唇を割った瞬間に、玲奈は自ら顔を前に出し、唇を半開きにして、絡みつく桜井の舌に応戦してしまったのだ。

ふっと桜井の腕の力が抜け、玲奈はどっと自分の椅子に倒れこんだ。
この間、時間にすれば数十秒のことに過ぎないが、玲奈は長く長く情を交わしたような気がした。
息が上がり、頬が上気していた。目の前に座る桜井の舌が甘かったような気さえしていた。

ごめんなさい。ちょっとトイレに。

桜井とは目を合わせずに、怜奈はポーチを持って席を立った。
トイレに入り壁にかけられた大き目の鏡を覗き込むと、頬を赤く染めた自分の姿が映った。これはワインのせいだけではないだろう。

ふう。いけない。

思わず言葉にしたが、怜奈は反省と興奮の中を揺れ動いていた。
思わずのキスは桜井だからというわけではなかったように思えたからだ。
怜奈は一部上場会社の本社に、コネではなく、一般職として採用されるほどの容姿である。若いころは当然のようにモテた。
どちらかというとセックスは好きなほうで、誰彼なくとっかえひっかえしていた訳ではなかったが、その時々の彼氏とプレイを楽しんできた口だ。
ここのところ忙しいという婚約者の田中には会えておらず、たまに会っても田中の最近のセックスは淡白で、今の怜奈は性的な面で満足できていなかった。
だから久しぶりのデートのような感覚に興奮してしまったのかもしれない。会社の自分より若い子に。
婚約者を持つ身のモラルとしてではなく、それが”いけない”の意味であった。

スカートをまくり、ストッキングとショーツを下ろす。
便座に座る前に覗き込むとショーツのクロッチの部分がうっすら濡れているのが分かった。
お酒を飲むだけで興奮するなんて・・・ちょっとショックを受けた。
怜奈はトイレを済ませるとビデのボタンを押し、膣の入口や中を洗い流して、ティッシュで軽く拭き取った。

トイレを済ませ、席に戻ろうと店の細い廊下を歩いていると、店の入口近くのレジに桜井の姿が見えた。
桜井は怜奈を見つけると手を上げた。怜奈は席に寄って、コートとバッグを手にすると桜井の元へ急いだ。

私も出します。
いいですよ。終わりました。出ましょう。

店を出ると桜井が手をつないできた。怜奈は躊躇したが久しぶりの男性の手と性的な興奮に抗えなかった。
桜井は大通りまで出ると手を上げ、客待ちで道路沿いに停まっていたタクシーを呼び寄せた。

○○まで。

怜奈の知らない建物名が告げられたが、行き先は聞くまでもなかった。
二人はタクシーの中で手をつないだまま無言の時間を過ごした。
 
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2016/03/14

桜井は薄暗い部屋に怜奈をエスコートした



怜奈はうす暗がりの中でベッドに横たわり、桜井の求めに応じて片方の膝を立て、股を大きく広げていた。
股間に桜井の頭が蠢いているのが分かる。
多分、桜井の舌であろう。柔らかな羽のような感触が太ももをのぼり、いよいよクロッチの部分に近づいてきているのを怜奈は感じていた。

怜奈さん・・・。

今日、何度目かの桜井の呟きが怜奈の耳に響いた。
結婚前のアバンチュールだもの。怜奈にはそれほどの罪悪感はなかった。
それよりもむしろ、ショーツの奥に隠された蜜つぼの熱いマグマが今にも噴き出しそうで、それを悟られるのではないかと気が気ではない。
こんなに濡れるのは久しぶりかも。挿入の期待にお腹の中で子宮がうごめいていた。ほんの軽いタッチですら気持ちが良く、万が一身をよじると、ねじりを解かれたひだから愛液が零れだしていきそうな勢いだった。

・・・

ほんの数十分前、桜井はドアノブを引いて薄暗い部屋に怜奈をエスコートした。どこかは分からないラブホテルである。
怜奈を部屋に導きソファの前まで来ると、桜井はくるりと向きなおし、二人は立ったままきつく抱擁を交わした。互いに言葉はなかった。
桜井の腕の力がわずかに解かれると、ほどなくして怜奈の目の前に桜井の顔が迫ってきた。
桜井の背は怜奈よりも頭一つ高い。怜奈は顔を上げ、桜井の顔と逆の向きに首を傾げ、キスを受け入れたのだった。
先ほどのワインバルでのキスよりも激しいキスが始まり、暗い部屋に二人の舌が絡みあうぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃとした音が長く響いた。

しばらく口だけの愛撫を続けていたが、背中に回っていた桜井の腕が徐々に上がってきて怜奈の肩を抱き、もう一方の腕は怜奈の髪を抱え込むような形になった。
怜奈の首は上を向き、口は半開きのままの状態だった。そこに歯茎までぶつかってしまいそうな勢いで桜井の舌が差し込まれた。
怜奈は桜井の腰に添えた腕に力を入れて、自分が倒れてしまわないように腰に抱きついていた。
獰猛な野獣が獲物に喰らいつくような、若い、激しい愛撫だったが、怜奈は目を瞑ってその身を任せた。

いけないと思いつつ怜奈は抵抗できないでいたのだった。
その怜奈の”いけない”という感覚は、結婚前の女性がこんなことをしてはいけないという倫理的なものではない。
会社の年下の男の子と性的な関係になってはいけないとの意味である。
つまり来週から会社でどんな顔をして会えばいいのか困るとか、二人がうまくいかなくなったときに常に会社で顔を合わせるのは後々つらいとか、そういう意味での”いけない”である。
だが、獰猛なキスを受け入れつつ、怜奈はもう一方の頭で冷静に考えていた。
5月には結婚による円満退職が決まっている。二人がつらくなる期間など知れたものだ。
そう考えると、このままの流れに身を任せてしまっても良いのではないかと思うのだった。
何より今のシチュエーションに怜奈の体が、本能が、止まらなくなっていた。
もはや冷静さはどこかに飛び、激しいセックスへの期待に怜奈の頭はぼーっとし始めていた。

キスを続けながら桜井の腕が怜奈のスーツを胸元から除け、ブラウスの上から胸をまさぐってきた。
今日はカチッとした固めのブラをしてきた。それにも関わらず桜井は掌で包み込むように優しく怜奈の胸を揉み続けていた。
怜奈は胸が熱くなり、鼻の奥がつんとした。
はあぁん。
自分自身のスイッチが入ったのか、舌を絡めた強引なキスがつらくなり、息とともに鼻から小さな吐息をが漏れる。
桜井はそれに気がつき、いっそう舌を挿しこみ、強引なキスを始めた。腕はさっきよりきつく胸を揉み始めた。
(若いっていうか。あぁぁぁん。もう。)
怜奈は桜井の腰に回した腕をほどき、そっと桜井の股間に手をやった。怜奈の腰も抜けそうであった。
怜奈の手に触れたソレはあきらかに大きく勃起している。

怜奈は桜井が腰を引いたことでこけそうになり、驚いて目を開けた。
二人は一蹴のうちに相当な至近距離で目を合わせた。互いに真顔である。
少し間をおいて桜井が言った。

怜奈さん・・・

怜奈は桜井の目を見たまま次の言葉を待った。

ぃぃですか?

モテそうに見えて桜井は意外につまらないことを聞く。しかし、この期に及んでも怜奈からアクションを起こさなければ何も進まないのだろう。
怜奈はそっと目を瞑り、こくんと頷いた。
 
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2016/03/13

桜井の腕が背中に周りブラのホックを外した



ワインに酔い、桜井との良い雰囲気に酔いながらも怜奈は意外と冷静でいた。桜井を年下だから、リードしなければいけないと思っている、若干軽く見ている、そんな自分が心の中に居たからだろう。
ここから、きっとソファに倒れこんで、互いにいちゃいちゃしながら一枚一枚服を脱がしあっていくに違いない。怜奈は次の展開をそんな風に考えていた。
だが、先ほどからの盛り上がりにもかかわらず、桜井は怜奈の腕を解き体を離すと、ベッドの向こう側に行き自分の上着を脱ぎ始めた。
(モテモテに見えるけど、意外と遊んでないのかもね。)
怜奈はそういう男を何人も見てきた。桜井もそういった類の一人だろうと見切ると、怜奈はベッドの反対側に移って上着を脱いだ。
ストッキングも脱ぎ去り、ブラとショーツだけになると、桜井の注意を引かない内にさっとシーツの中にもぐりこんだのだった。

遅れて桜井がシーツを少し引っ張っりベッドに入ってきた。乾いたシーツが怜奈の太ももをさすり、そのシーツの感触が気持ちよかった。
桜井はベッドの端から腰を動かして怜奈に密着すると、すぐに手で怜奈の髪をかき上げ、顔を近づけて唇にキスをしてきた。
怜奈は目を閉じた。今日はこの桜井に身を任せることに決めたのだ。
ここにきて年が上とか下とか、自分の結婚が近いとか、そういった状況は怜奈にはもう関係がなかった。
この人を受け入れる。きっと気持ちが良い。良くないかもしれない。でもそれでいい。
そう思っていた。

迫ってきた桜井の最初のキスは先ほどよりマイルドで、唾液すら甘く感じるような、気持ちの良いものだった。
(こうやってベッドにのるまで、焦ってたのかな?)
先ほどまでの桜井のおかしな行動は、不慣れが原因かまたはその他か。いずれにしれもあまり女ずれしていない男だと思った。
自分の態度を決めたことで、怜奈は桜井の心の動きや幼さや、それに伴う行動が透けて見えてくるようだった。
もう間違いなくセックスまで持ち込めるというタイミングまで、恐らく桜井は”自信がなかった”のだと。

そもそもホテルに来ている時点で、というかワインバルで自分からキスをせがんだ時点で桜井の勝ちは決まっていたのにと思うと、怜奈はおかしかった。
そうやって考えてみると、桜井はもしかして自分を神格化してるのではないかとも思った。
怜奈は自分では30ばばあと卑下している部分もあったのだが、もしかしたら桜井から見るとそうじゃないのかもしれない。
手軽にいけた、盛り上がった姉さんを、今日はやってやろうという流れじゃないのかもしれない。
そんな気もしてきた。皆のアイドルとまで言われた桜井がその気なのは怜奈にも嬉しかった。

キスを続けたまま桜井の腕が背中に周り、固めのブラのホックを外した。予想以上に上手な一つまみの外し方であった。
怜奈が協力してブラから腕を抜くと、桜井はシーツをはぐって、怜奈の胸をあらわにしようとした。
怜奈は抵抗とは取られない程度に腕をクロスして、胸の、いや乳首の露出を避けた。
しかしその腕はあっさり桜井の腕ではねのけられ、怜奈の乳首は桜井のくちびるの中に消えていった。

比較的大きな乳首。決してピンクとは言えない乳輪も乳首の勃起に引っ張られて隆起していた。
桜井の舌がその乳輪を丁寧に舐めた。乳房から乳輪、乳首へと桜井の舌が這い、乳首の先でピンっと舌が跳ねた。
再び、その立った乳首を桜井の唇が覆い、クルクルクルとリズミカルに舌を回して、最後にちゅっと唇を離した。
その舌も吸い付きも気持ちが良い。怜奈の乳首はぴんぴんに立った。

年齢相応に大きくて張りがあり、転がしがいのある乳首だった。桜井は、この乳首、舌に乗るなあ。転がしやすいなあ。いくらでも回るし。コリコリしてると密かに思っていた。
桜井は怜奈の左右の胸と乳首を十分に愛撫すると、シーツをはぐり、怜奈の体の足元まで滑り降りていった。
憧れの先輩と言うほどの付き合いではない。
たまたま漏らした怜奈さんという言葉に食いついてきた女性だ。今日は打ち上げだし、いいじゃないか。いや、そもそも目の前に捧げられた体を頂かないのは失礼と言うものだ。
桜井は足元から頭にかけて怜奈の体を見つめた。いつも見ていたハイヒールの似合うふくらはぎ。今は手に触ることができる。ほらこれだ。すべすべだ。
そして白い太もも。きっとお尻も大きいんだろう。ショーツの中身まではまだ分からないが、お腹はぽっこりとはしていないな。ウェストもちゃんとある。
少しひしゃげちゃいるがオッパイも大きいじゃないか。興奮してるんだな。乳首が立ってる。肩の下まである髪は俺の好みなんだよな。
顔は可愛いがさすがに20代って感じじゃない。でも目を瞑って次の展開を待ってるのは従順じゃないか。
桜井はサディスティックな感情に捕らわれた。
 
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2016/03/12

いよいよ桜井の舌はショーツのふちまでやってきた



足の指の一本一本から、くるぶし、ふくらはぎ、膝の裏となめくじのように桜井の舌が這い、執拗なふとももへの愛撫を終えて、いよいよ桜井の舌はふとももとショーツのふちまでやってきていた。
反対の足へは手の愛撫がずっと続いていた。怜奈の蜜つぼの中のマグマはいよいよ煮えたぎっていた。
片膝を立てた状態のショーツの上から、桜井の鼻が膣口をふるふると左右に振ったとき、怜奈の小陰唇はとうとうそのよじれを解き、膣口の奥から漏れ出した愛液がクロッチに絡みつきニチャニチャと卑猥な音を立てた。
ああぁ。怜奈は恥ずかしさで顔を覆ってしまいそうだったが、桜井はそれには構わず、鼻と舌でクロッチを擦りあげた。
もはや愛液なのか唾液なのか分からないくらい濡れたショーツに桜井が手をかけた。

怜奈さん・・・。

怜奈は腰を浮かせて桜井がショーツを抜き去るのに協力をした。怜奈のお尻を覆っていた小さな布はあっさりと脱がされ、桜井は再び怜奈の股間に沈んだ。
怜奈は小さく目を開けた。股間に桜井の頭が見えた。あの桜井が、さっきまで一緒に食事をしていた桜井が、昨日まで一緒にイベントを完遂しようと話し合っていた桜井が、今は自分の股間に頭をうずめ一生懸命秘所に舌を転がしている。
最初に小陰唇をひとしきり舐め、クリトリスを簡単に攻めた桜井の舌は、今や怜奈の膣口に届こうとしていた。
そして桜井の舌が怜奈の膣口に直接触れた瞬間、怜奈はお腹の中で何かが動いたような気がした。
それはとても熱く震えるような感触で、怜奈は思わず腰を跳ね上げてしまった。
それは、丁度、脚で桜井の頭をはさみ、膣へ舌をいざなうような形となった。
何かのうねりが出てきそうで、怜奈はその態勢のまま桜井の頭を手で押さえ込み、桜井の顔を股間に擦り付けた。
腹が小刻みに痙攣し始め、怜奈は本能的に頭を浮かせてその痙攣に耐える体勢をとった。腕に更に力が加わっていた。
ぶわーっと何かが体の中から放出されて行くような気持ちだった。
実際に熱い愛液が膣の奥から送り出され桜井の鼻を覆い、その液は口にまで垂れていた。

あふあぁぁあはぁっぁ

怜奈自身は何を叫んだかは覚えていない。ただ、頭と腰を何度も跳ねさせ、両手をしっかり握って、ただ桜井の顔を股間に押し付けていたのだ。何かにつかまっていなければどこかに落ちていってしまいそうな感覚だった。
腹の奥底から続く小刻みな痙攣が収まると、怜奈はやっと桜井の後頭部で結んだ両手の指を解いた。
一方、桜井はなんだかわけが分からず、少し下がってシーツで鼻と口をぬぐった。

怜奈は年に何度かこうした経験をする。大抵は長く付き合った気を許せるパートナーとのセックスで、自分が性的に盛り上がっているタイミングだ。
そういえば婚約者の田中の田中のセックスが淡白になったのは、あの時からだったかも。真っ白な頭の中で怜奈はぼんやりと考えていた。

怜奈さんいったの?

小さな声で桜井が聞いてきた。本当は放っておいて欲しかったが、怜奈は手で顔を隠したままこくんとうなずいた。
じゃあ今度はと桜井が怜奈の体に乗っかってきた。何度もいける女性はいるというが、怜奈は一度イクとあとはもうどうでも良かった。本当はやめて欲しかったが、それを言うのは失礼と思い、桜井に体を預けた。
 
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2016/03/11

桜井はペニスの角度を調整し怜奈の中に入っていった



桜井は手でペニスの角度を調整し、怜奈の膣口に亀頭をあてがうと、ゆっくりと腰を押し出し、体を倒して怜奈の中に入っていった。
怜奈の顔を見つめるがふぅんと言ったきり挿入に対する反応は薄かった。
怜奈の手をどけて、キスをしてみる。舌は返ってくるがそれも本気かどうか分からない。
ただ、通常であれば2、3回浅いピストンをゆっくりと繰り返し、ペニスに十分なラブジュースをまぶした後で、膣奥までの挿入をスムースにするのだが、今夜に限ってはそれは必要なかった。
怜奈の膣の中は熱く、溢れるほどのラブジュースで満たされており、最初の挿入ですらじゅぷぷと音を立てるほどだったからだ。
膣壁も十分に濡れており、桜井の亀頭はなんのストレスもなく奥まで進んだ。
ただそれも問題だった。
桜井がペニスから感じ取った感触では、怜奈の膣の最初の数センチ程度は濡れた壁である程度のしまりがある。
そしてその奥にぽっかりした空間があり、それを過ぎるとすぐに壁があった。
壁というか何かこりこりしたものだ。
そのこりこりに当たるとペニスは方向を変え、もう少し奥まで行ける。
なんとも不思議な感触だった。
そしてそれは決して気持ちの良いものではない。

桜井は何度かピストンを繰り返したが、亀頭がこりこりに当たる度に、怜奈が眉を寄せ痛そうな顔をするのが気になった。
なにかとても可愛そうなことをしている気になり、そうこうしている内に会社の女性とこういうことをしているという罪悪感(恐怖感?)も手伝ってペニスがしぼみ始めた。
送出しても怜奈の反応が薄かったことも、中折れに一役買った。
そんな内に怜奈の膣口から一旦ペニスが抜けると、次に挿入することが困難なくらいにしぼんでしまった。

あれ、俺。あれ。

桜井の焦りを怜奈も感じていた。
桜井が怜奈の股間でどうにもならずに膝立ちをしてるのを見て、怜奈は手を伸ばした。
怜奈の隣に桜井が倒れこんできた。うつ伏せになって枕に顔を突っ伏したまま桜井が言った。

ごめん、俺。怜奈さん、ごめん。
疲れてるんだよ。そういうこと、あるよ。

怜奈は自分にも責任の一端があることを感じていた。なので桜井を傷つけないように、桜井の後頭部に手を回し髪をなでながら言った。
桜井が向きなおして互いの顔を見つめる形になった。
怜奈は目を瞑り口を突き出した。

んー。キスして。

横向きに抱き合ってキスをした。互いに体をまさぐり合った。
怜奈は桜井のペニスに手を伸ばし竿を手にした。もう怜奈の手に隠れそうなサイズになっていた。
 
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2016/03/10

口でしてあげよっか。



口でしてあげよっか。

桜井のペニスが少しだけ反応を始めたのを確かめると怜奈は言った。
桜井は情けなさそうな顔でうなずいた。

怜奈が体を起こし桜井の横に体を移動すると、桜井は仰向けになった。
怜奈は桜井のモノを横から見て、竿に口をつけた。
左手で玉を優しく触りながら、竿を下から上に丁寧に舐めてあげる。
桜井のペニスはほんの少し硬度を戻し始めていた。
右を振り返ると、桜井は枕を2つ重ね、頭を持ち上げる形で怜奈の行為を見ていた。
もうと手を振り、怜奈はその右手で桜井の乳首の辺りを触った。
左手はペニスに沿えゆっくりと擦りながら、舌でへその辺りを舐めた。
桜井のペニスは太くなり、擦る範囲もだんだんに広がってきた。
怜奈は桜井の股間に入ると、立ちきっていないペニスを操縦桿のように自分の側に倒して、更に皮を大きく剥いた。
桜井の亀頭があらわになり、怜奈の目の前にあった。
カリはあまり大きくない。黒くもない。ピンクの亀頭が可愛らしかった。
あまり見つめているだけじゃ可愛そうかなと、怜奈はその亀頭に顔を近づけた。
まずは、鈴の口のようになっている尿道の割れ目に沿って尖らせた舌をつーっと這わせる。

おぅぅ

ずっと怜奈の姿を見ていた桜井がうめき、腰を引いた。
鈴の口に溜まっていた我慢汁が怜奈の舌との間に細い糸を引く。
怜奈の舌はしばらく鈴の口を上下し桜井をいじめると、次に口の周りを舐め始めた。
まだ小さな亀頭の先だけを唇に含み、唇に入った範囲だけを舌で転がした。
怜奈は知ってか知らずか、男がやられると足の指の先が熱くなって、なんともむずがゆくなる行為だ。
その行為を繰り返し、次にカリまで行かない範囲だけ、音を立ててキスした。
桜井のペニスは8割がた回復していた。

怜奈さん、もっと。
もっとなに?
お、奥まで。

我慢できずに桜井が思いを口にした。それを聞いて怜奈はカリまで含んだ。
ペニスの根元あたりを左手で押さえ、亀頭周辺に皮の余りがなくなった状態でカリを咥える。
唇に力を入れたまま、カリに引っ掛かりを加えてそれを抜く。じゅぽんと音がした。
また鈴の口を押し広げるように唇をあててカリまでを飲み込み、引き抜く。
じゅぽん。じゅぽん。と音が響いた。

お願い。もっと奥まで。

桜井の腕が伸びてきて、怜奈の頭を押し付けた。
 
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2016/03/09

あの日から2ヶ月か。怜奈は思い出していた。



桜井のペニスが大きく反ってくると、足元からフェラチオを続けるのが困難になってきた。
桜井が体を起こして怜奈の足を軽く取ったので、怜奈はシックスナインと察した。
体を反転させ桜井をまたぐと、目の前に桜井のペニスがあった。
亀頭は可愛らしいピンク色だがサイズは人並みに十分大きかった。
怜奈はそのペニスを飲み込み、上下に深くスロートした。

一方、桜井は怜奈の股間を触り始めた。
怜奈のお腹と自分の顔の狭い隙間から指を入れてクリトリスを攻め、舌は膣口を舐めている。
かなりきつい態勢のはずだ。しかもこの角度であれば怜奈が腰を振ったときにはアナルに鼻がついていることだろう。
それも厭わず舐めてくれている。それを思うと怜奈の腹の奥でまたなにかが蠢き始めた。

怜奈はより深くペニスを飲み込んだ。できるだけ奥まで。舌で包んでやると桜井のペニスの温かみが感じられた。
亀頭が喉の奥に触れた時に桜井がわずかに腰を動かした。喉が嘔吐のときのように反射して気道が狭くなる。

おごぅっう、と喉の奥から唾液とは違う粘液が流れ出てきて、鼻も垂れた。きっと今は酷い顔になっているだろう。でもいい。なんだか気持ちいい。
妙な粘液で滑りの良くなったペニスを、怜奈はじゅっぽ、じゅっぽとリズミカルに強く吸い上げた。
怜奈の膣を指でかき回していた桜井が不意に指を抜いた。
シックスナインの形のまま怜奈が潮を吹いたからだ。いや小水だったかもしれない。いずれにしてもその液体は桜井の顔をぬらした。
瞬間、桜井の竿が大きくなり、金玉がきゅっと小さくなったようにも見えた。
あ、逝くんだわ。怜奈には分かった。だが口は離さなかった。
口の中に桜井の一発目の濃い精液が広がったとき、怜奈の腹の奥底でまた何かが爆発した。
桜井の射精に呼応したように怜奈の腹が痙攣し、シックスナインの態勢で逃げ場のない桜井の顔に、何度も自分の肉饅頭を押し付ける形になった。

あっあっ、押し付けてる

と思いながらびくんびくんと体が動き続ける。痙攣は止まらなかった。
第2段、3段と徐々に少なくなる漂白剤のような匂いの精液を舌に受けながら怜奈は決してペニスから口を離すことはなかった。
むしろ射精などなかったかのように口をすぼめ、まだ硬度を失わないペニスを貪り、5度、6度と大きく啜ったのだった。


・・・


あの日から2ヶ月か。

5月の暖かい電車の中で怜奈は目を上げた。
たった今、怜奈の頭の中を隠微な思い出が駆け巡っていたことなど誰にも気がつかれるはずもないのだが、なんとなく辺りを見回し、誰にも注目されていないことを確認して安心をした。
桜井とはその後ぎくしゃくすることもなく、セックスをすることもなく、平穏無事な2ヶ月間が過ぎた。
ただ、桜井にはたまに食事に誘われ、その度にトイレで簡単に抜いてあげるような間柄になっていた。

彼はアイドルじゃなく、これから会社のスターになる人。
私の役目はこれでお終い。それで良いんだわ。

怜奈は自分の中で区切りをつけると、明日からの有給休暇で何をするのだったか確認するためスケジュール帳を取り出した。
隣の6月のページには、大きく花丸が付いていた。
 
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