福山駅につくと陽子はスタスタと歩き愛子をあるお店に誘導した。
そこは男女を交互に座らせるという噂のある居酒屋だった。
週末ということもあり店はそれなりに繁盛していたが
二人だということを告げるとなんとか入ることができた。
案内されたのは店の一番奥にある4人掛けテーブルだった。
隣の4人掛けテーブルが空いていたので
もしかしたらと陽子は期待に胸を膨らませた。
案内してくれた店員がそのままテーブルを離れなかったので
陽子は「とりあえず生、中ジョッキで」とすぐに注文した。
愛子はメニューを眺め、しばらく考えてからピーチハイを注文した。
忙しい店員のことを考えない愛子ののリズム感が、陽子には耐えられなかった。
最初の一杯が来るまでは愛子とたわいのない話をした。
愛子は自ら話題を振るタイプではないことを知っていたので
陽子は自ら、愛子の最近の生活について訊ねた。
愛子は聞けば答えるのである。決して悪い子ではない。
ただ、天然というか自分から話題を振ることは決してない。
しかし、自分の興が乗ると己のことばかり話す。
そういう天延ぶりが陽子には合わないと感じていた。
そして最初のグラスを乾杯すると、珍しく愛子から話題を振ってきた。
「それで陽子ちゃん。神戸はどうなん?」
陽子にとっては、あまり話したくない話題である。
陽子はぐっと詰まったが、しかし陽子も会話に飢えていた。
最初のうちは素敵な町並み、大きな百貨店、美味しいお菓子など
紋切り型の素晴らしい神戸を語っていた陽子だったが
ビールが2杯目の半ばに移るころには、
未知の土地、言葉の壁、夫との不仲について
つい愛子に語ってしまった。
お酒の勢いもあったろう。
あー、失敗したなーと陽子は思っていた。
義父とそれに伴う夫の借金については口を濁したのだが
そのために返って話の辻褄が合わなくなり
それがまた如何にもダメダメそうな人生を匂わせたのだ。
普段、雰囲気を読まない愛子にもそのあたりのニュアンスは伝わった。
最初は、憧れの都会生活にきゃーとかすごーいを連発していた愛子だったが
途中から徐々にそのトーンを落とし、返事があーそうなんだーに変わった。
愛子のパターンとして、なんとか慰めようとするのだが
自分に経験もなく自信がないのか、アドバイスの一つもできず
あーそうなんだと聞いて終わる流れが多かった。
陽子は「大丈夫いねー」と根拠もなく笑い飛ばしてくれる
そんな友人と飲みたかったのである。
話題に困り二人が言葉少なになっていた頃に
隣の席に若い男性の二人組が案内されてやってきた。
陽に焼けたガタイの良い、格好良い男達だ。
陽子は見た瞬間に背の高い男を良いなと思った。
すると目線を送る間もなく小さいほうの男が声をかけてきた。
こんばんはー。おねーさん達、二人ですかー。
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