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2013/09/19

『シチリアの熱い風』 第8話“復活祭”



「クレモナのパスクァって知ってる?キリスト教の復活祭のことなんだけど」
「ええ、知ってるわ。でも確か4月20日頃じゃなかった?今はもう9月よ」
「うん、そのとおり。復活祭は4月19日、20日のヨーロッパ全土で行われるキリスト教の祭りなんだ。キリストが十字架に処刑され、埋葬された後、復活して甦ったとされる記念日なんだ。その日に親しい人に贈るのが、UOVA DI PASCUA・・・つまりパスクァの卵なんだ」

俊介はキリストの復活祭のことを説明し始めたが、私たちとどういう関係があるのだろうか。
チョコレートはとても大きくて、高さが60cmほどある。

俊介は説明を中断して、バッグから木のハンマーを取り出した。

「イヴ、このハンマーでチョコレートを割ってごらん」
「え?チョコレートを割るの?」

私は彼のいうままに、ハンマーを持ちチョコレートを割った。
卵形のチョコレートの中央には予め、割れ目が入っていたようで、いとも簡単に二つに割れてしまった。
そしてその中から透明の小さな箱が出てきた。

「その箱を開けてごらん」

私は小箱を手に取り、そっと開けてみた。

「えぇっ!なあに~!?これってダイアモンドの指輪じゃないの!?」
「それは君へのプレゼントだ。今日は君と僕との復活祭だ」
「え・・・?」

頬からは幾筋もの涙が伝った。

「イヴ・・・結婚してくれ」


私たちはフロントに連絡し、部屋をダブルに変更してもらった。
つまりホテル内の引越しである。
新しい部屋もベランダが南側に面していて、日当たりが良い。

「いい部屋だね」
「そうね。海も一望できるわね」

荷物をクローゼットに片付けた後、ソファに腰を掛けてコーヒーを飲んだ。
イタリアではコーヒーといえば普通エスプレッソだ。
私にとっては少し苦い。
早速ミルクをたっぷり注ぎ、シュガーをひとさじ入れる。
俊介はブラックのままでゆっくりとコーヒーカップを傾けている。

私は俊介にもジョルジョにも謝らなくてはならない。
口に含んだエスプレッソがひときわ苦く感じる。
再びミルクを継ぎ足す。

「俊介、あのぅ・・・、あなたに謝らなくてはいけないの・・・」
「どうしたの?急に改まって」
「私ね、浮気してたの、このシチリアで・・・」
「ふ~ん、そうなんだ。別にいいよ、オレ、イタリア男になんか負けね~からさ」
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