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2016/11/05

「線虫」精密検査の回



木谷さんは、次はこちらですよといちいち俺の手を取り、院内の各受付を一緒に回ってくれた。
江波が木谷さんを俺に付けてくれたのはきっと同期のよしみだろう。俺の頭の中では、木谷さんが江波に頼み込んで俺に付いたという妄想が沸いたが、それについては何とか払拭した。
木谷さんが俺の手を引いて歩いてくれる姿は、他人から見ればじじいの扱いに違いなかったからだ。いわゆる介護者だな。
だが、実際、早すぎたり遅すぎたりする頭に体がついてこない状態の俺が助かったのは事実だ。
木谷さんがあまりにも好みすぎて、ずっと勃起が収まらないのも事実だったが。。。

江波は精密検査を受けさせると言ったが、俺の感じる限り、その内容は健康診断と大差のないものだった。
最初にカップを受け取り、特別にしつらえたトイレの中で検尿を取ってきてくれということだった。カップを渡してくれたのは妙齢のナースで一瞬で俺は再勃起した。が、妙な言葉を出さないように抑制し、トイレにこもって勃起が収まるのを待った。朝からトイレは我慢していたので、濃い尿を並々とカップに取ることができた。これには俺も大満足だった。
次に男に問診を受けた。頭で思ったことがうまく口に表せない。しようがないので、指さしで思うところを伝えた。きっと俺の答えに専門医も驚いたことだろう。今の俺は人の3倍増しの天才なのだ。頭は回っている。間違いない。
次に採血。採血ってのはあれだな。どうしておっぱいの近くまで腕を引っ張るんだろうな。もう触ってくれと言わんばかりに腕を引っ張り、固めのナース服に触れるか触れないかまで持っていく。おっぱい触ってほしいんじゃないのか。丁寧に腕まで触られてつい顔がにやけちまうよな。
そして身体測定。カーテンで仕切られた個室にナースと二人きりってのはどういうことだ。しかも検査着をウエストまで持ち上げさせて、俺の腹回りに抱き着いてくるなんて、これは好意の表れか。思わず勃起したものを看護師に押し付けてしまいそうになるじゃないか。
血圧の検査も採血と同じだが、こいつは大抵おばさんナースの仕事だ。あれは勃起した陰茎を通常状態に戻させるための所業に違いない。だが俺は違うぜ。にっこり笑っておばさんナースに腕を渡した。俺の血圧の高さにおばさんも驚いたことだろう。
肺活量の測定は今一力が入らなかった。今の体の状態ではしかたないだろう。そして、視力の測定、眼球の風圧検査。こいつはおっさんだったから何も感じない。強いて言えば目が痛てぇ。
続く、聴力検査は狭いボックスに一人きりなので勃起は収まったままだった。だがそのボックス内は雑音が溢れていて、俺はあまり上手にスイッチを押すことができなかった。あのボックスだけは改善すべきだと思う。
さらに肺のX線を取り、あとはバリュウム。胃の検査だ。あれは機械が上下左右に動くので体を支えるのに必死だったがなんとか乗り越えたぜ。一人きりになる検査は俺を不安にさせる。まあ、部屋から出るたびに木谷さんが待っていてくれるのが救いだがな。
そして心電図。狭い部屋におばさん技師と二人きりだ。妙にぬるぬるとした液体を吸盤に塗って、俺の足、腕、胸に吸い付かせる。いったいこれは何のプレイだ。勃起、勃起、勃起。まともな心電図なんか取れるわけないじゃないか。病院はあほなのか。
もう一つ、きつかったのは直腸検査だ。人様のけつに指を突っ込むなどバカげている。お前はどれだけ偉いというのだ。幸い男の医師だったから問題ないが、これが女だったら俺は貴重な精子を一発分まき散らしてるぞ。

この馬鹿どもが。
俺様を診察するのに健康診断的なものは何の意味も持たない。

と思ったのだが、木谷さんに手を引かれたそれぞれの検査は結構バラ色の夢見心地で、俺の頭の中はピンクで満たされ、やりてぇやりてぇの言葉がリフレインしていた。
唯一、健康診断でやらない検査がMRIだろう。ここだけは江波の配慮が効いていたのかもしれない。
そう言えばあいつ同窓会のときに、脳外科医はMRIが大好きだという話をしていたな。MRAだったか。忘れたが。
カンカンと音が鳴るのは気になるが、頭と下半身と分けて撮ってくれた。
随分と時間をかけていたが、あれはあいつの紹介状が効いてるんだろう…
 
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2016/11/04

「線虫」逃走の回(1)第一報



先生!

インターンの木谷美和子が江波隆介の執務室に飛び込んできた。
江波は読みかけていた書類から目を上げ、入口に木谷を認めると額にかけていた眼鏡をずり下げ、鼻にかけ直した。

大変なんです、先生!

訳が分からないまま木谷を見つめ鷹揚に構える江波に対して、今起きた問題を早く江波に伝えようと木谷は泡を食っていた。

(またか。何が大変なのか何も伝わってこない。)

木谷はインターンとしての知識は十分だ。まじめで努力家でもある。学閥も今の部長と同じ大学の出身だし、両親ともに開業医であって家柄も申し分ない。
まさにここで医師になるべくして育った女性ということになるだろう。だが、若さゆえか残念ながら彼女には決定的に落ち着きが足らない。
冷静さや落ち着き。これは医師になるにあたって必要不可欠な要素だ。
それは江波の持論だった。

(僕はそれを彼女に教えていかなければならない。)

ずんずんと机の前に迫ってくる木谷を見ながら、江波はそんなことを考えていた。

木谷君。まずノックはしたまえ。それと落ち着い…
先生。これは落ち着いていられません。

なんとか木谷の言葉を制しようとしたが、江波の言葉に被せて木谷は声を荒げ続けた。

新谷さんが消えたんですよ。
なんだって!
 
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2016/11/03

「線虫」逃走の回(2)江波からの視点



だから、新谷さんが消えたんです。

流石の江波も、この言葉には面食らった。

分かった。木谷君、少し落ち着いて。状況を教えてくれ。
だから、新谷さん消えたんです。
消えたっていう意味を説明してくれないか。
だから病院から逃げたんです。
逃げたっていうのは、玄関から出てった?
そうです。
出ていったのを見た?
見ました。
追いかけた?
思ったよりも早くて駐車場で見失いました。

ここで一つ問題が解決した。病院から走り去ったということは新谷は生きている。医師にとって人が生きているかどうかは最重要だ。

出ていったのはいつのこと?
MRIの後です。
えっと。検査は全部受けさせたの?
はい。MRIまで。

MRIの順番がどうなっているのかは俺は知らない。が、とりあえず全ての検査は受けさせたらしい。
誘導しなくてもこのくらいの情報は、第一報で欲しいと思うのは俺のわがままなんだろうか。

分かった。それでMRIの後、どうした。
はい。それなんですけど…

やっと木谷の表情に安堵の色が見えた。先ずは彼女の責任において介護していた患者が走り去ったという部分を責めなかったのが良かったのだろう。
ただ、それがだれの責任なのか、ここから先は具体的に聞かなければなにも分からないので責めなかっただけなのだが。
とりあえず応接用の椅子を木谷に勧めた。冷静に話すには椅子に座るに限る。

それで新谷は急に走り始めたの?
そうです。
その時の状況を細かに教えてください。
 
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2016/11/02

「線虫」逃走の回(3)木谷の報告



それがMRIも終わって、あとは会計だけだったんです。
うん、それで。
受付のソファに座られて、もう良いかなと思ったんですが、きつそうなんで隣に座って、しばらく話してたら、新谷さんが急に、分からないことをつぶやき始めて…
分からないことっていうのは?
「したい」とか「広げなきゃ」とか。よく聞こえませんでした。
うーんと、その時の新谷の様子はどうだった?
体が前後に揺れてました。
それだけ?
目がちょっと
ちょっとなに
焦点が合ってない感じでした。
なるほど。言葉というか、話の前後の脈絡は?
言葉はもどかしい感じでしたね。脈絡はとくに。
特にというのは。
先生との高校時代の話とかしていました。
ふむ。最初はまともだったということかな?
そうです。言葉は詰まっていましたが。
その内におかしくなったと…

江波は視線をそらし、少し考えている風だった。

ふーむ。君の結論として薬物的な感じか。感覚としての判断だが。
それはあるかもしれません。
なるほどな。それで?
それでも言葉の内は良かったのですが、私の…

木谷の言葉が詰まった。

なんだ。
私の、胸を触る仕草を始めて、先生の知り合いなものであまりこう邪険にもできないでいたら、そこから股間にも…パンツスーツなので適当にいなしてたのですが、待合の椅子に押し倒してきたので殴りました。
知り合いは別にいい。どこをなぐった。顔か。
顔です。
木谷君は怪我をしてないか。
怪我はありません。それで急に我に返ったようになられて。
新谷の目が戻った?
そうです。
 
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2016/11/01

「線虫」逃走の回(4)江波の収束



木谷美和子のつたない報告を聞く限り、新谷幹夫の症状は薬物依存かなにかに間違いない。
検査は全て受けたということだから、近々、委縮した脳のMRIを受け取ることになるだろう。
江波隆介は、やはり情に流されて旧友の依頼など受けるべきではなかったと後悔していた。

しかし起きてしまったことはしようがない。これをどう収束にもっていくかが重要だ。
自分自身が紹介状を書いてしまったことについてはどうしようもない。
これはもみ消しても問題は残るだろう。

しかし、それ以外は新谷の木谷に対するセクハラと、新谷の会計が未処理だという問題くらいだ。
待合もざわついただろうが、まあ、一般の患者に木谷の顔は知られてない。痴話げんかで済むだろう。

江波は木谷をソファに残して執務机に戻ると、どっかと座り込んだ。
気は重たいがこうした処理は自分自身で進めるしかないのだ。
ピッピッピと番号を選択し、馴染みの脳外科の会計に連絡を入れた。

あ、私だ。
江波先生ですか。
うん。ちょっと困ったことが起きてね。
はい?
私の知り合いを健康診断に回したんだが、払わずに帰ったようだ。
なるほど、いけませんね。
その請求を私に回してもらいたい。
はい?
穏便に済ませたいということだ。分かるね。外来の会計に話を付けてもらえるかな。
はい。承知しました。えっと患者さんのお名前を…
新谷幹夫。し・ん・た・に・み・き・お。MRIを2か所使った。
結構な額になりますが、全て先生で?
うん。それは構いません。
承知しました。
うん。急いで頼むよ。もめてるかもしれない。

江波は受話器を置いた。金が入ってくれば会計的には問題はないだろう。これで会計の問題はクリアだ。
残るは木谷君へのセクハラ問題か。
まあ、インターンの木谷くらい篭絡するのは簡単なのだが、さて、患者のプライバシー問題でも吹っ掛けるかな…
まったく気の重い話だ。
  
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2016/10/31

「線虫」逃走の回(5)走る



俺は走っていた。

既に病院の駐車場は潜り抜け、大通りに入っていた。その大通りの歩道をただあてどもなく走っていた。
頭には何も思いつかない。ただ本能的に走っていた。既に息は上がり、足元もおぼつかない。歩道の小さな段差にすら突っかかりそうになりながら、それでもただ走っていた。
平日のビルから出てきたサラリーマンが一瞬目の端に俺を認め、速足で避けるのが分かる。
向こうからやってきた薄いカーデガンを着たOL二人組が、道の端に避けて抱き合い、俺が通り過ぎるのを祈るように待っている。お前らレズかよ。
息が荒い。わき腹がじくじくと痛む。さっきから心臓がドクドクと畝っていて喉から飛び出しそうだ。

がはーっ

と大きく息を吐いて俺は立ち止った。前かがみになって膝に手をつき2、3度浅く呼吸をすると、そこから背伸びをして大きく息を吸い込んだ。
簡単には息は戻らない。頭皮から垂れてきた汗が、顔を流れていく。おそらく1kmも走っていないのだがとにかくわき腹が痛い。
革靴でアスファルトを走ったために負担がかかったのか、太ももが震え、膝ががくがくした。2、3歩歩いて歩道の脇のガードレールに寄りかかる。

(一体なんなんだ。俺は何をしてるんだ。)

自分自身に問いかける。検査は。検査は、受けた。その後だ。受付で、あの、なんていったか、名前は忘れたが、あのお嬢ちゃんと話をしていたときに、ピンクの霧が襲ってきて、気が付いたら押し倒していた。俺の手は。手は彼女の胸をつかんでいた。
病院の受付だぞ。あれだけたくさんの人がいる中で俺はいったい何をしてるんだ。犯罪じゃないか。ありえない。そして。
そして。逃げた。逃げるしかない、そう思った。あの状況じゃあな。
あ、病院の金、払ってないな。江波になんて言う。いや江波にはもう伝わってるか。まずいな。まずい。
しかし。とりあえず落ち着くか。喉が渇いた。

周りを見渡すとファミレスが見えた。

あそこで落ち着くか。(ハラヘッタナ)そうだ腹が減った。考えてみれば昨日の昼から何も食べてない。(ノドモカワイタ)そうだ。喉も乾いてる。ファミレスで飯を食っていったん落ち着こう。

俺は震える足を引きずるようによろめきながら、ファミレスの階段を昇って行った。
 
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