2ntブログ
--/--/--

スポンサーサイト

2016/10/31

「線虫」逃走の回(5)走る



俺は走っていた。

既に病院の駐車場は潜り抜け、大通りに入っていた。その大通りの歩道をただあてどもなく走っていた。
頭には何も思いつかない。ただ本能的に走っていた。既に息は上がり、足元もおぼつかない。歩道の小さな段差にすら突っかかりそうになりながら、それでもただ走っていた。
平日のビルから出てきたサラリーマンが一瞬目の端に俺を認め、速足で避けるのが分かる。
向こうからやってきた薄いカーデガンを着たOL二人組が、道の端に避けて抱き合い、俺が通り過ぎるのを祈るように待っている。お前らレズかよ。
息が荒い。わき腹がじくじくと痛む。さっきから心臓がドクドクと畝っていて喉から飛び出しそうだ。

がはーっ

と大きく息を吐いて俺は立ち止った。前かがみになって膝に手をつき2、3度浅く呼吸をすると、そこから背伸びをして大きく息を吸い込んだ。
簡単には息は戻らない。頭皮から垂れてきた汗が、顔を流れていく。おそらく1kmも走っていないのだがとにかくわき腹が痛い。
革靴でアスファルトを走ったために負担がかかったのか、太ももが震え、膝ががくがくした。2、3歩歩いて歩道の脇のガードレールに寄りかかる。

(一体なんなんだ。俺は何をしてるんだ。)

自分自身に問いかける。検査は。検査は、受けた。その後だ。受付で、あの、なんていったか、名前は忘れたが、あのお嬢ちゃんと話をしていたときに、ピンクの霧が襲ってきて、気が付いたら押し倒していた。俺の手は。手は彼女の胸をつかんでいた。
病院の受付だぞ。あれだけたくさんの人がいる中で俺はいったい何をしてるんだ。犯罪じゃないか。ありえない。そして。
そして。逃げた。逃げるしかない、そう思った。あの状況じゃあな。
あ、病院の金、払ってないな。江波になんて言う。いや江波にはもう伝わってるか。まずいな。まずい。
しかし。とりあえず落ち着くか。喉が渇いた。

周りを見渡すとファミレスが見えた。

あそこで落ち着くか。(ハラヘッタナ)そうだ腹が減った。考えてみれば昨日の昼から何も食べてない。(ノドモカワイタ)そうだ。喉も乾いてる。ファミレスで飯を食っていったん落ち着こう。

俺は震える足を引きずるようによろめきながら、ファミレスの階段を昇って行った。
 
関連記事

>> どのストーリーでもあなたの琴線に触れたなら、1クリック応援をよろしくお願いします。

みんなが読んでる話題の情報
  1. 女性の性欲発動スイッチSMS
  2. 美人専用逆ナンパシークレッツ ~ たくさんの美人が向こうから勝手にあなたにすり寄ってくるこの魔法を知りたくはないのですか? ~
  3. 唯一無二の女になるための5stepのエッセンス~九州恋愛コンサルタント内野舞Presence~


コメント

非公開コメント

アクセスランキング ブログパーツ