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2014/09/09

ゆるふわガールの帰省



5月の夜、湊愛子は広島県福山市にいた。
このお正月に結婚を誓い合った東野誠一郎
必ず帰ると言った3月になっても広島には戻らず
最近では忙しいからと電話も少ない。

せっかく同じ携帯会社にしたのに

それを言い始めると誠一郎はいつも不機嫌になった。
そうして微妙な空気のまま2人の会話は終わることが多かった。

きっと東京に彼女ができたんじゃね。

愛子はいつしかそう思うようになった。
誰かに愚痴りたいなあと思っていた矢先、
幼馴染の長田陽子から電話がかかってきた。
陽子は今週末、友人の結婚式に出席するために
尾道に戻ってくるという。

結婚式は日曜日じゃけー金曜とかに会わん?
えーよーえーよ。

愛子は渡りに船とその話に乗った。
広島市から車を飛ばせば実家のある尾道までは1時間程度だ。
定時で仕事を上がってもよかったのだが、
法事でと嘘をつき愛子は午後半休を取った。

12時に仕事を終え、一旦アパートに戻って着替え
荷物をまとめると、実家への短いドライブを楽しんだ。
途中で祖父の好きなもみじ饅頭をお土産に買い
郊外のレストランでゆっくりと時間を取って食事をした。
結局、実家近くに着いたのは15時を少し過ぎていた。

愛子の実家は尾道の千光寺山荘の少し下にある。
山の下の駐車場に車を止め、線路を渡って
通り道になっているお寺の山門をくぐり
階段状の小道を昇っていく。

愛子は小学校から高校までずっとこの小道を通っていた。
小道を振り返ると、眼下に尾道の街が広がる。
空襲を受けることなく昭和の建物が多く残った
この尾道の街並みが、愛子は嫌いだった。

愛子の人生はふわふわ流されるがままのものだった。
高校は自分の実力で受かる程度の普通課へ進み、
当時仲の良かった友達が行くという広島市内の短大を一緒に受け、
短大卒業後はそのまま広島市内の半官半民のような会社に就職した。

両親は地元に残ってくれたと大変喜んでくれたが
愛子自身は何をしたいからという意思も無く
受けたら受かったから就職したようなものだ。
この先、なんとなく誠一郎と結婚し
子供が生まれて、そして広島県内で一生を終えるのだろう。
自分の人生はそういうものだと考えていた。

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2014/09/08

ゆるふわガールの故郷は良いところ



愛子は、一旦、家に着いておじいちゃんにお土産を渡し
今日は友達と飲みに行くので遅くなることを母に告げた。

あんたー、あんまり遅うならんようによ。

愛子は母の小言が長くなる前に白のサンダルを履き家を出た。
長田陽子との待ち合わせは16時半だ。まだ余裕がある。
愛子は久々の尾道の風景を眺めながら先ほどの小路を下った。

愛子にはもうすっかり見慣れた風景だが
小路の左右にはいつ建ったのか分からないような家々が並んでいた。
尾道のこの辺りは海に迫った形で山が張り出している。
そしてその山の斜面にへばり付くように家が建っている。
その家々の間を人が一人通れるような小路が縦横に走っており
車が通れるような道は殆んどないのだ。
いったいこれだけの家を誰がどうやって建てたのか
地元民の愛子でも不思議に感じるくらいだ。

小路は途中でお寺の境内につながっている。
境内の手前には昔からの掲示板があって
去年のベッチャー祭の写真が掲示してあった。
ベッチャー祭というのは
3匹の鬼が子供達を叩いて回る尾道に古くからある祭だ。
叩かれた子供は無病息災が約束されるというよくあるやつだ。
勿論、鬼は痛くないように子供を叩くのだが、
その鬼のお面が怖くて子供は逃げまどう。

昔は怖かったよなー

愛子は笑いながら山門を抜け、階段を降り、線路を渡って2号線に出た。
そのまま右に曲がって少々歩けば尾道駅ターミナルに着くのだが
時間があったので、港の方まで出てみることにした。
ここから港までは100mもない、すぐ近い距離だ。

地元民の愛子には見慣れた風景で感慨もないだろうが
尾道の街は実に面白い。

港の近くまで張り出した山に家がへばりつき
家々の間を縦横に小路が通っている。
その山を降りたところから港までは100mもないのだが
その僅かな間に昭和チックな建物が点在しており飽きない。
港まで出れば海のすぐ向こうに向島が見える。
この海というのが尾道水道で、200m程度の幅しかない。
ぱっと見は川か運河と勘違いしそうなこの海を
15分に1本程度、小さなフェリーが運航しており
これが向島と尾道市街を結ぶ市民の足となっているのだ。
最近は港側が再開発され綺麗な遊歩道ができている。

愛子はこの遊歩道をゆっくりと歩いて駅ターミナルに向かった。

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2014/09/07

生活苦と望郷の念



水曜の夜、長田陽子は携帯に電話番号の残っている
故郷の友人に電話をかけまくっていた。

陽子は結婚して、今、神戸市内に住んでいるのだが
この週末に高校時代の友人の結婚式に呼ばれたため
久しぶりに旦那を置いて地元の尾道に帰れるのだった。

だが金曜の夜、遊ぶ予定だった友人に急な用事が入ってしまった。
兎に角、はめを外して思いっきり遊びたい。
そういう一緒に遊んでくれる友達を探していた。

造船会社で働く夫に連れられて地元を離れてから2年
陽子は未だに神戸の街に馴染めずにいた。
自分が育った尾道の素朴で懐かしい雰囲気に比べると
神戸は何もかもが気取っているように思えた。

また陽子は関西弁にも馴染めず、自分がなにか話すと
どこの田舎者ですか?と思われているのではないかと感じ
外出した時の口数もすっかり少なくなっていた。


陽子は若くして結婚した。
神戸からやってきた前途有望な若手課長を捕まえた。
これでやっとしがらみだらけの田舎町から開放されるのだ。
結婚したときには、そんな晴れがましい気分だった。

夫の地元である神戸の、海に面したホテルで披露宴を行った。
友人や知人をたくさん招き、みんなから祝福された。
みんなが羨ましいと言ってくれ陽子は有頂天だった。
だがそこが幸せのピークだった。

先に書いたような知らない土地の軋轢と言葉の壁もあるが
それ以上に憂鬱なのは夫と義父の借金であった。
義父は自営で新聞販売所を営んでいた。

かつては大きく儲け、街の顔役にまでなっていたのだが
販売網を拡張しようとしたところで義父が事業に躓いた。
その時の借金は3,000万円を越えていた。

そのタイミングで自己破産でもすれば傷も浅かったのだろうが
かつての栄光が忘れられず、まだいけると義父は借金を重ねた。
どうにも立ち行かなくなると息子からも無心をした。

陽子の夫の長田隆一は真面目に働く男であったが
なにせまだ若く、給料だって多いわけじゃない。
また付き合いの飲みごとも多く家計はいつも火の車だった。

そうした様々な事情が陽子の望郷の念を生んだ。

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2014/09/06

少しでも自分を知る地元の人間と交流したかった



広島に戻りたい

日々の生活の不安から夫に何度か言ってみたことはあったが
若いんだからその内神戸にも慣れるよと相手にされなかった。
義父の件については隆一が不機嫌になるので滅多に言えなかった。

こうして抑圧される一方で、夫は会社での仕事が面白いらしく
遅く帰ってきては、その日あったことを嬉しそうに話すのだ。
陽子にしてみればその話を聞くのが苦痛だった。

正直、陽子はこうした夫婦生活に疲れきっていた。
そこに地元の友人からの結婚式の招待状である。
これはもうテンションが上がらないわけがない。

夫も久々に元気に話す陽子の姿が嬉しかったようで
しばらくゆっくりしてきたらいいよと言ってくれた。

夫からのOKも出た。
陽子にとって久しぶりの帰郷である。
嬉しくてあちこちに電話をし段取りを組んでいたのだが
直前になって金曜に遊ぶ予定だった友人がダメになってしまった。

既に前もって予定を聞いていた友人達は全滅であった。
陽子はしようがなく携帯の電話番号から幼馴染の湊愛子を選んだ。

わー陽子ちゃん帰ってくるんじゃね。
えーよーえーよー遊ぼうやー。

幼馴染とは言え、中学、高校とクラブも違って
しかも短大に進学した愛子とは随分疎遠になっていた。
ポワポワした天然の性格の愛子とは相性も良いと思っていなかった。

もちろん、陽子の結婚式・披露宴には愛子も招待した。
でもそれは自分がいかに幸せかを見せ付けるためであって
今更の自分の境遇を、万が一にも話してしまうのは悔しかった。

しかし背に腹は変えられない。
陽子は少しでも自分を知る地元の人間と交流したかった。

結婚式は日曜日じゃけー金曜とかに会わん?
えーよーえーよ。
急でごめんねー。夕方からとかええ?
陽子ちゃん帰ってくるなら会社休むよー。
じゃあ16時半とか。駅ターミナルで。
うん。そうしよう。
じゃあ金曜日。お願いねー。
楽しみじゃねー。

陽子は電話を切るとどこか良い飲み屋がないかをネットで検索した。

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2014/09/05

女友達との久しぶりの再会



あいこーお待たせー

尾道駅ターミナルの2階ラウンジから港を眺めていると
元気な声で長田陽子が現れた。

陽子ちゃん久しぶりー
愛子変わらんねえ
陽子ちゃんは大人っぽいよ

愛子は花柄のふわふわワンピース姿であったが
陽子はノースリーブの薄いグリーンのワンピースに
ベージュのニットを羽織り
コルクのヒールが付いたサンダル姿であった。

やっぱ都会に行くと変わるんじゃねー。
なんでー変わらんちゃー。これ普通じゃけー。

しばらくは格好のことなど他愛もない話できゃいきゃい騒いでいたが
どこかで落ち着いて話そうということになった。

ほいでどこ行く?
うん。地元じゃあれじゃけ福山行こうや。
福山ね。えーよぉ。

尾道から福山までは電車で40分程度である。
飲むところも限られる上、地元で顔を指す尾道に比べれば
多少都会で、少々羽目を外しても噂になることもない
愛子にとっても福山で飲むほうが気楽だった。
二人は切符を買って電車に乗り込んだ。

それで神戸はどうなん?
あーそれは後で話すけえ。
聞いちゃあいけんかった?
いけんことないけど。それよりあんたぁ。
なん?
東野君とどねーなっちょん。
あーそれ。それ話したかったんよ。
なんかあったん?
なごーなるけどええ?
ええいね。
それが聞いてーや。ひどいんちゃあ。

愛子は誠一郎が約束を破って3月末に帰って来なかったこと
そして最近では電話のやりとりが上手くいかない事などを
福山に向かう電車の中で陽子に語った。
じっくり話を聞いた陽子からすると
単に誠一郎の仕事が忙しいだけではないかと思われたが

あーそれは彼女できたんかもねー

と適当に話を合わせておいた。
そもそも女同士の会話に否定などいらないのである。
求めているであろう答えを返せば永遠に会話は続く。
その結果、電車内では一方的に愛子が喋り続けた。

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2014/09/04

見栄っ張りと地元の能天気な女友達



金曜日、陽子は時間ぴったりに尾道駅ターミナルに着いた。
階段を上がってラウンジを見渡すとすぐに愛子を見つけた。
愛子は花柄のワンピース姿で相変わらずガーリーだった。

あいこーお待たせー

陽子は努めて明るく声をかけた。

陽子ちゃん久しぶりー
愛子変わらんねえ
陽子ちゃんは大人っぽいよ

当然だ。少しでも都会の幸せ奥様に見せたかった陽子は
この日のために服も靴も新調してきたのだった。
名付けてザ・若奥様。
気張った格好に愛子が予想通りの反応をしたので陽子は溜飲が下がった。

これ、おばちゃんに。

陽子はトートバックから神戸銘菓を取り出し愛子に差し出した。
実際には家計は火の車でお土産を買うのも苦しいのだが
陽子はここでも余裕の常識人ぶってみせた。

うわー。お母さん喜ぶわー。
うん、宜しくゆっといてね。
でもこれ大きいねえ。持って歩けんよ。
ロッカーに入れたらええよ。

愛子の行動は一つ一つ指示してやらなければならない。分かっていたことだ。
さてどこで飲もうかという段になって、陽子は福山を提案した。
実は先日、ネットで尾道周辺の飲み屋さんを調べた際に
男女を交互に配置してくれるという店を見つけたのだった。

もし万が一、愛子と二人きりで会話に困ったとしても
その時は隣の男性と仲良くすればいい
そんな酷い陽子の策略だった。
そうとは知らない愛子は福山行きに賛成した。

尾道から福山までは電車で40分程度である。
電車の中では、陽子は自分の境遇についての話は避け
ずっと愛子の愚痴を聞くことにした。
他人の不幸は蜜の味である。

しかし愛子からの話は
恋人の東野が出向からまだ帰ってこないとか
最近、東野の電話での対応が冷たいとか
陽子から見れば実にどうでもいい内容だった。
段々話に飽きてつい

あーそれは彼女できたんかもねー

などと意地悪く言ってしまったが
愛子にはそれは意地悪と捕らえられなかったようだ。
正にわが意を得たりと愛子は一層最近の状況について話すのだった。

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