学校に行きたくない。
順子は初めてそう思った。これまでに一度も感じたことのない感情である。
小学校時代は学校に行くことが面白く、むしろ毎日早起きをしていたくらいだった。
友達もたくさんいて、毎日、馬鹿な話をした。
遅くまで校庭でかけっこもした。走ることが大好きだった。
みんなが嫌がる小テストだって嫌いじゃなかった。人よりも少し良い点を取れるのが自慢だった。
先生とお話しするのも大好きだった。自分の知らないことを色々と教えてもらった。
何より、毎日元気に学校に行くことで、父親や母親が自分を褒めてくれるのが嬉しかった。
「健康で、利発で、自慢の娘」父や母の笑顔が頭に浮かび、順子は布団の中で一人泣いた。
母親が起きてこない順子を心配して布団まで来てくれたが、
ごめん、今日は体調が悪いから、学校休む。
そう言ってその日は休むことにした。
しかし、いつまでも休み続けてはいられない。
順子が3日も休めば、きっと両親共に心配し、その理由を問い詰めてくるであろう。
そして自分の体臭が元で、学校で一人ぼっちになってしまっていることを話さなくてはならなくなる。
それも苦痛だが、順子は両親に心配をかけるのが嫌だった。
それで翌日は普通に起きて支度をし、学校へ向かった。
順子は学校に着くと教室へは向かわず、保健室に直行した。
お、、、おはようございます。
あら寺島さん。おはよう。怪我?
若い保健師の浅村悦子が椅子を回し、順子と目が会うと訊ねてきた。
順子は陸上部の練習で打身やすり傷を作ったときに何度か保健室を訪れていた。
快活で美人であり学内でも目立っていた順子は、浅村の覚えも良かったのである。
んー。えっちゃん。ここで勉強してもいい?
怪我とか熱とかじゃないのね。
うん。。。
なにかあったの?
んー。言わなきゃだめ?
だめじゃないけど。じゃあ、言いたくなったらでいいや。
今日はここで勉強していい?
隣に教室があるけど、
ここがいいの。えっちゃんの横。
保健室の隣には、メンタルに問題があり授業に出られない生徒のための小さく区切られた教室があり、不登校でないにせよクラスに馴染めない子達はそこで学習をしていた。
その時の順子は知らなかったが、学校にはカウンセラーが常駐しており、不登校や保健室登校の生徒のカウンセリングもしているのだった。
もう。しようがないなあ。今日だけだよ。
さすが、えっちゃん。
先生には私から伝えとこうね。
うん。
美少女の順子が満面に笑みを浮かべ、安堵の表情を表した。
兎にも角にも学校には来た。家には伝えないように浅村から担任にお願いをして今日のところはこれでしのげる。
その日、順子は浅村と尽きることのない話しをした。
学校には色々な生徒が居るということ。不登校の子や保健室登校の子のこと。
中学の頃は浅村自身がいじめられっ子だったという昔話。そしてどうして保健師になったのかという話。
本当に話は尽きることがなく、大人の恋愛事情から子どもの恋愛事情。クラブ活動の話。
高校生や大学生の生活はこうだよという話。大人になるともっと世界が広がるよという話も。
結局、その日、順子は勉強することもなく一日、浅村と話をして過ごした。
浅村は順子の話を真剣に聞き、順子の位置まで降りてきてくれてアドバイスをくれた。
若い浅村も、順子から見れば立派なお姉さん先生でキラキラと輝いていた。
えっちゃん、明日もここに来ていい?
うん。順ちゃんは学校に来ることが大事だからね。いいよ。
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