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2015/04/07

ぶつかってみたら意外に簡単に解決!よーし!



翌日、順子は普通に登校し、意を決して教室の扉を開けた。
順子は刺すような視線の集中砲火を覚悟していたが、誰も特に順子を意識する者はいなかった。
意地悪グループも順子に注目することなく教室の隅に固まってぎゃははと下品な笑い声を上げていた。
男子は数人のグループでサッカーだか野球の話に興じているようだ。
教室の雰囲気は以前とまったく変わらないものだった。
順子がおずおずと自分の席に着くと、同じ陸上部の多佳子がやってきてのんきに話しかけた。

おはよう、順子。風邪?
あーいや、まー、そんなもんかな。

順子はしどろもどろになりながら答えた。
話が昨夜の歌の特番のミスチルの話題になった頃に登校してきた陸上部の圭子がちょっと伏せ目がちに席に近づいてきた。
圭子は順子の前に立つと、いきなり深々と頭を下げた。

順子、ごめん。ほんっとごめん。
圭子、やめてやめて。いいよ。もういいから。
え、なになに。

状況がつかめていない多佳子が目をきょろきょろさせながら、二人の顔を交互に見た。

なんでもなーいよ。
えーなにー。私だけ知らないのー。

ちょうどお調子者の多佳子が仲介に立った感じで、3人は顔を見合わせ笑い声を上げた。
その日は何事もなく終わった。いつもの日常だった。
意地悪グループは相変わらず順子に意地の悪い視線を投げかけてきたが、順子が凛としていればそれ以上のことは何もしてこなかった。
クラブで仲良くしていた友達と普通にお喋りができれば、順子にとってはそれは日常なのである。
帰り道に順子は思った。

普通に行ってよかった。
それにしてもえっちゃんは凄いなあ。
体の怪我だけじゃなくて心のケアもしちゃうんだもん。
私の目線まで降りてきてくれてちゃんとお話も聞いてくれるし。
ああいうのを大人の女性って言うのかなあ。
看護師さん?保健師さんっていうのかな?
あたしもなれるかなあ。
私も人を助ける人になりたいぞー。

まだ頬の膨らみにかすかに幼さが残る美少女の順子は、にったらにったらと一人笑いしながら帰り道を歩いた。
暗い雲の中をもがき続け、ひょっこりと顔を出してみたら、向こうになにか明るい光が差しているのを見つけた。
そんななにか愉快な気分だった。
順子はなんとなくだが自分の方向を見つけた気がしていた。



そろそろ進路を決める段になって順子は看護学校に進みたいのだがと浅村に相談した。
浅村は冷静に順子の成績を聞くともったいないと反対し、準看から看護師になるのがどれだけ大変かを力説した。
順子の成績であれば進学校に進むべきで、その後、看護科のある大学に進むほうがよほど楽だし、ためにもなる。経験も積めると教えてくれた。
その頃の順子は浅村を崇拝していたので、分かった。それで行くと決心したのである。

そして高校から大学へと無事、進学を果たし、勉強とキャンパスライフ、その他の”経験”も積んでいったのであった。

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