麦藁帽が全力で走りながら、避けろ避けろと手をちょいちょい左に動かすので、リカコは左向きに後ずさった。
真っ黒男がリカコににじり寄ろうと一歩踏み出したちょうどそのタイミングで、麦藁帽が高飛びのように足を踏み切った。
水平になったその姿があまりにも鮮やかで、まるで麦藁帽の体が空中に浮いているかのように、リカコの目にはスローモーションのように映った。
「トーっ!」と、麦藁帽が真っ黒男の背中に水平キックを見舞った。
突然の背後からの襲撃に真っ黒男はもんどりうって倒れこみ、顔面から砂に突っ伏した。
そこに勢いのついた麦藁帽の体が落ちてくる。全体重が乗った肘が真っ黒男の背中に突き刺さり「ぐえっ」と蛙のような声が青空に響いた。
麦藁帽は速攻で立ち上がり、ビーチサンダルで真っ黒男の頭をがしがしがしっと3回踏みつけた。
正義の味方 参上!
やり方がえぐいが、その言い方とあまりにも鮮やか過ぎる展開にリカコは目を見開いたまま動けなかった。
ここで事態が分からず呆然としていた金髪が、やっと仲間をやられたことに気づき、いきり立った。
○×△※☆▲*!○×△※☆▲*!われー!
最後の「われー!」以外はよく聞き取れない。異国の言葉のようだった。
金髪が威嚇しようと一歩二歩と足を踏み出すと、麦藁帽は前触れもなく「ドーン!」と前蹴りを放った。
この前蹴りがまた面白いように金髪の腹に突き刺さり、金髪は腹をかばおうと前かがみになった。
そのタイミングを逃さず麦藁帽が歩を進め、金髪の頭をわっしと抱えると2回、3回と左右の膝を入れた。
しゅみません。しゅみません。。。
金髪が即効で音を上げた。真っ黒男は起き上がって膝立ちになっていたがもう反撃する気力はないようだ。
・・・
この海岸で悪いことしたらいかんぞ。
麦藁帽は金髪と真っ黒男を正座させ、顔に似合わない説教を垂れていた。
この頃になると周りには野次馬が集まり、その内の何人かは麦藁帽の知り合いらしかった。
金髪は顔を腫らし鼻血が出続けていて、真っ黒男は砂だらけのままだった。
どう見てもやり過ぎの麦藁帽のくせに、真っ白なTシャツで腰に手をやり胸を張って説教する姿と、麦藁帽の幼い顔があまりにもアンマッチでリカコは可笑しくなった。
ね。もう。いいから。
リカコが麦藁帽の後ろから白いTシャツを引っ張った。
え、いいの?
いいって。人も集まってるでしょ。
あ、もういいってさ。
やっと許された金髪と真っ黒男がノロノロと立ち上がり、前かがみになりながら人ごみを分けて去ろうとした時
ねーさんに謝って行かんか!
とタケシのケンカキックが真っ黒男の尻を蹴飛ばし、野次馬からは歓声が上がった。
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