ずっとタケシを憎からず思っていたリカコだが、自らが告白に踏み切れなかったのには訳があった。
それはタケシの職業がテキヤだったからである。
タケシは神奈川一帯に根を張る伝統的な神農団体に所属していた。
正直に言って、普通の社会に生きてきたリカコにはテキヤとやくざの違いがよく分からない。
タケシが間違いのない良い男だというのは、周囲の評判からも自分自身が見てきたタケシの人柄からも理解はできる。
だが常識的な両親に育てられ、普通に高校から大学へと進み、一般的な生活を送っている自分がやくざと付き合うとは、これから一体どうなってしまうのか不安があったのだ。
二人が付き合い始める随分と前のある夜、地元のパーティの2次会でリカコはタケシに直接聞いてみたことがある。
もちろん、タケシが何を聞いても怒らずに教えてくれるとリカコは分かっていたからだ。
だってテキヤってやくざなんでしょ?
いや違うって。やくざは8、9、3。足して0。役に立たないの。
足したら20だし。なんの話か分からないよ。
花札だよ。
いま花札の話してないじゃん。
あー。うん。あ、やくざは博打で稼ぐ人。テキヤは商売で稼ぐ人。
ジェットスキーも商売なの?
そうだよ。海の家とかもそう。
縄張りとかあるんでしょ?
あー。まあ庭場はあるね。地元に関係ないのが海の家やったら面倒じゃん。
じゃあ縄張り争いもあるってことでしょ。
いや、そういうの滅多にないし。上の方で取り決めがあるからさ。
それってやっぱりやくざと同じじゃないの。
んーとだからほら、縁日で出店なかったら寂しいじゃん。
うん。
ああいうの。人が来ないようなとこまで生活物資と笑顔を届けるんだよ。
それ自衛隊の仕事でいいんじゃない。
あーなんか俺、頭が悪いからうまく言えないんだけど・・・
うん。
なんか日本人にはハレとケってのがあってさ
ハレの日ね。よく聞く。
そうそう。お祭りとかワクワクする所に行って喜んで物を買ってもらう商売
うん。
それがテキヤって思ってもらえると分かり易いね。
でも喧嘩するんでしょ。
しないって(笑)
この日、リカコはお酒を飲んで少々甘えていたのかもしれない。
地元で慕われてるタケシのことは大好きなのだが、結局、テキヤというものがなんだかよく理解できなくて、リカコは踏み切れずにいたのだった。
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