志保は、最初の土曜に玄関先で会ったときも「この間はありがとうございました」から始まって積極的に文哉に話しかけた。
そこで分かったことは、文哉は鳥取の出身ということだった。鳥取と岡山は山陰・山陽と離れているものの、電車を使えば2時間かからない距離だ。
そのため人口20万人の鳥取市の人間が、デートやショッピングで山陽に出るときに岡山に出てくることはよくある。
勿論、神戸や大阪を目指すこともあるが、日帰りでちょっと洒落たショッピングをするなら岡山市だ。
一方、志保も鳥取には行ったことがあった。砂丘観光もそうだが、毎年出し物の変わる砂の美術館は友人と訪れることがたびたびあった。
こんな千葉の片隅でたまたま隣り合わせになった岡山出身の志保と、鳥取出身の文哉が、岡山駅前の話しで盛り上がるのは当然だった。
しかも若い二人。この時点で微妙に文哉に惹かれている志保と、今はまだ千葉の右も左も分からない就職したばかりの文哉であれば尚更のことといえよう。
文哉は3月の関東の初めての寒さにこたつか灯油ヒーターの購入を考えていて、志保にホームセンターの場所を訪ねたりもした。
2人の会話は弾み、それじゃあ一緒に行きましょうか?という志保の受け答えから即席のデートとなった。
初めての土地での同郷のありがたさからか文哉も徐々に志保に惹かれていった。
そして、ある日の志保の手料理をきっかけに、二人は深い関係になった。
若い男女はくっつき、そして離れる。そしてそれを繰り返すものだ。
・・・
5月の金曜日、志保は友人と食べるはずの夕飯がダメになりそうだからと言って文哉の部屋を訪れた。
え、でも、志保さんの部屋に入っても良いんですか。
またまたー。文哉君、今更でしょ。
でもまだ入ったことないですよ。
そんなの気にする間柄じゃないでしょってこと。
あ、まあ。それはまあ。
それにご飯食べようって言ってるんだし。お姉さんに甘えなさい。
じゃあ、僕、お酒買ってきますよ。
あ、いいねー。じゃあビールはあるからワインなんかが良いかな。
ワインですか。
うん、ピザがあるから。そういうのが良いかなって。
ワインとか分からないんですよ。
なんでも。私も分からないし。気にしないって。
そんな感じで、文哉はワインを買いに行き、初めて志保の部屋を訪れることになった。
遅くなりました。へえ、志保さんの部屋ってこんな感じなんだ。
何もない殺風景な感じでしょ。
そんなことないです。でも僕の部屋と左右対称で変な感じですね。
あー。それねー。マンションって大体そういう造りよね。
そうなんですね。知りませんでした。
それより、ほら。座って。飲みましょ。料理温めるから。
はい。ここで良いですか。
文哉はソファに腰掛けた。文哉の部屋はコタツを置き、手を伸ばせばなんでも取れるような学生ノリの配置にしていたが、志保の部屋は洋風にソファが置かれていた。流石に女性の部屋らしく、ちょっとしたアクセサリやぬいぐるみが置かれて、文哉は自分の部屋とは随分違うことを感じていた。大人と子供の趣味が混ざり合ったような女性の部屋に、文哉はドキドキしていた。
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