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2016/04/15

伊藤文哉と志保の出会いは、一年と少し前のことだ。



伊藤文哉と志保の出会いは、一年と少し前のことだ。ここしばらく隣の部屋がバタバタしてるなあと感じていた3月の下旬、深夜に帰宅した志保の部屋のチャイムが鳴った。
そのチャイムの音は、下の玄関のオートロックのものではなく、直接、ドア横のインターホンが押されたときの音だった。
志保の部屋のチャイムが鳴るときには、ろくなことはない。
大抵がマンションの自治会の回覧か、時間を無視した新聞の押し売りか、NHKの勧誘だ。
いずれもちゃんと払っているのに、何度もやって来る。衛星なんか見る暇もないのにNHKがやってくるのは、本当に憤慨ものだった。
それで志保は、明らかにいやな感じを前面に押し出し、剣のある声でインターフォンに対応した。

はい?

志保の嫌味のこもった言い方に臆せず、インターフォン越しの相手は遠慮がちながらも明るい物腰で返答した。

あ、夜分、本当にすみません。先日隣に越してきた伊藤と申します。
ああ。はい。
遅くにすみません。いつもいらっしゃらないので、挨拶だけと思いまして。

その声色に相手の悪意を感じなかったので、志保はちょっと対応に失敗したかなと思った。
一方で、こんな都会のマンションで、引越しの挨拶なんて珍しいこともあるなーとも思った。
志保自身が、就職を決めてそのマンションに入ったときには上下と、左右2つくらいには挨拶を持っていった。
だが、その上下左右の住人が移り変わったときは挨拶なんてやってこなかったからだ。
志保の育った岡山や神戸とは違い、関東とはそういうものだと志保自身、妙に納得していた。
志保はキッチンの灯りをつけて、ドアのチェーンを外さないまま応対した。
実際、都会は何があるか分からない。それも普通のことだ。

あ、すみません。隣に越してきた伊藤と言います。
はい。
色々とご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いします。
こちらこそ。お願いします。
これ。お近づきの印に。
いえ、えーっと。
あ、石鹸です。全然お気になさらずに。
それじゃあ頂きます。すみません。
すみません。それじゃよろしくお願いします。

志保は「はい。それでは。」と言ってドアを閉じた。
内側から灯りを付けていたので、相手からは顔がよく見えなかったと思うが、志保の側からは相手の顔がよく見えた。
若々しい、見るからに田舎から出てきたばかりの青年だった。きっと、年齢もそれほど自分と離れていないだろうと思えた。
志保は伊藤の2つのことに興味を持った。1つはその伊藤の顔が自分の好みにどんぴしゃだったということ。
そしてもう1つは、ごく短い会話の中に中国地方特有のイントネーションが含まれていたことだった。

次の土曜、玄関先で伊藤文哉と顔を合わせた志保は、引越しの挨拶のお礼を言い、その会話の中から文哉が鳥取出身であることを知った。
いやー岡山のイオンモールはよく行ってましたよーと同郷を喜ぶ文哉と、殺伐とした生活の中に潤いを求める志保がエッチな関係になるのにそれほどの時間を要しなかった。
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