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2015/04/02

S男からの旅立ち、、、そして現在



思い返してみれば、和久井は若くて美人でグラマラスな玩具を手に入れて好き放題やっていただけの変態野郎に過ぎないのだが、不思議と今の順子にも和久井に対する憎悪の念がない。
腋臭のせいで悲惨な性体験をたくさん経験したものの、若い順子にも奔放なセックスは必要だったし、最悪なあの時期の順子を受け入れ、心を支えてくれたのは、やはり和久井に違いないからだ。
クリトリスが大きくなってしまったことと、寂しさを紛らわすために自分でバイブを使う癖がついてしまったことを除けば、和久井もそんなに悪い奴じゃなかったと順子は今でも考えている。

ところで、そんな和久井との別れはあっけなくやってきた。和久井の会社が左前になってしまったのだ。
和久井は自宅から離れたファミレスに順子を呼び出すと、遊んでる時間もお金も余裕がなくなってしまったと馬鹿正直に告げてきた。
元から既婚者だということは分かっていたし、なにか無茶苦茶なセックスで順子からも和久井に対する恋愛感情はなくなっていた。
これと差し出された封筒には50万が入っていた。別れを切り出す和久井は、何か怖がっているように見えて、小さく思えた。
その時に順子の頭の中でもやもやしてた霧が、一気にスコーンと晴れた気がした。

じゃあ、もうお互いに電話はなしにしようね。

和久井の顔が一瞬晴れたのを横目に、順子は席を立って別れのファミレスから飛び出した。
なんだっけー。いつだったか、中学の帰り道にこんなことがあったなあ。
頬の膨らみもとれいつの間にか大人の顔になった順子ではあったが、にったらにったらと一人笑いしながら帰り道を歩いた。
その瞳からは大粒の涙が溢れていた。


そして順子は最初の病院をやめた。


二つ目の病院への就職はすぐに決まった。
和久井から渡された手切れ金は、引越しと新しい家具の購入と携帯の変更に使った。

環境を変えれば良いんだ。
そして私から変わればいいんだ。

美人でグラマラスな順子は相変わらず目立つ存在だ。
だから新しい病院に移ってからは、色恋沙汰に極端に気をつけた。変な噂はごめんだ。
また、意識して真面目で先輩からも可愛がられる寺島順子であり続けるよう努力をした。
その結果、院内における順子のポジションはみるみる上がっていった。


ケアされるんじゃなくて、私がケアする側に回らなきゃ。
いつだったかの、えっちゃんみたいにならなきゃね。

順子は保健師になるべく勉強も始めることにした。
立ち止まっていられない。そんな強い気持ちが帰ってきたのだった。







金曜の夜、寺島順子は部屋で一人、顔をほころばせていた。
思い出すまいとしても、どうしても今日の祐樹とのセックスを思い出し、顔がにまにましてしまう。

あー。祐樹君のことは、ケアしすぎちゃったかな~。
だって可愛いんだもーん。ああ、もう、ゆうききゅーん。

今の病院に移ってからずっとずっと色恋沙汰は控えていたのだが、純粋で駆け引きのない大学生のアタックについつい乗っかってしまった。いやむしろ自分から誘ったのだ。
それがまた順子を興奮させた。順子は引き出しを開け、ショーツの下に隠したバイブに手を伸ばした。
和久井に改造されたクリトリスは既に小豆大に膨らみ、快感への期待に艶めいていた。
(了)
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2015/03/08

朝起きたら耳が聞こえなくてびっくりしたぜ



野村祐樹は電車のスツールに寄りかかっていた。

(たまにむわっと香るんだよなー。マジやばいなー。)

彼は今、周囲の人間にばれないように気をつけながら自分の服にこびりついた女の体臭を確認していた。
祐樹の鼻がバカになっているのかどの程度匂うのかがよく分からなかったので彼はシャツの襟を両手でひっぱり胸に向けて再び鼻をスンスンと鳴らしてみた。
5月の東西線は立つ人影もまばらで、もし乗客の誰かが彼のその行為を見ていたならば、それはきっと奇妙な光景に映ったであろう。

(電車降りたら煙草の煙を吹きかけて匂いをごまかすか。それにしても。。。)

祐樹は今日のめくるめくセックスを思い出し始めた。若い彼はそれだけでまた勃起してしまう。他の乗客にばれないようにドア側を向き、勃起したペニスの位置を直しながら祐樹は寺島順子との出会いから回想を始めた。
寺島順子との出会いは病院であった。



昨年の12月、祐樹が眠りから覚めると同時に右耳に違和感を感じた。ふと目に入った枕には少しだけ血が付き、擦れた痕がついている。祐樹が慌てて耳に手をやると指先にも血が付いた。頬もざらざらした感じだ。慌てて起き上がり姿見で自分の横顔を見ると確かに耳から出血している。祐樹はその時、右耳の聞こえ方が極端に悪くなっていることに気がついた。

中耳炎か。

自分の発した言葉が右耳の中でくぐもり、骨を通して頭の中に響いた。

あー。あー。あー。やっぱり中耳炎だな。

祐樹は幼い頃から鼻の通りが悪く、冬になると中耳炎を発症することがあった。この音の篭り方は中耳炎に違いない。しかし何かがおかしいと感じた。通常、耳垂れが出るほどに中耳炎が悪化したときには、その前に耳の中の炎症で顎を動かすことすらできなくなるはずだった。それが何の痛みも前触れもなく、突然、朝、耳から血と膿が出てくるとは。
これは祐樹にとって経験のないことだった。

不安になった祐樹は階段を降り、パートに出かける前の母親に相談をして近所の耳鼻科に行くことにした。幼い頃から通っている耳鼻科の先生の見たてでは真珠腫性中耳炎とのことだった。真珠腫性中耳炎とは、中耳炎を繰り返すうちに一部の上皮組織が球状に増殖して、耳の周りの骨を破壊する病気だ。手術による治療しかないよとのことで東京の大きな病院への紹介状を書いてくれた。

翌日、母親を伴って都内の病院へ行き、再度、診察を受けた結果、真珠腫性中耳炎に間違いないとの診断が下った。その日のうちに1月の手術日が決まり、様々な承諾書や入院のしおりをもらって家に帰ることになった。

これまでに大きな病気や怪我も無く過ごしてきた祐樹にとって入院ましてや手術というのは大変大きな不安となってのしかかった。しかし手術をしなければより大きな病気につながっていくよと医師に言われ、また母親にも今のうちに治しておきなさいと言われ、やるしかないかとの気になったのである。
 
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2015/03/07

手術、入院、そして美人ナースを眺める日々



1月、祐樹は様々な不安を抱えたまま入院初日を迎えた。入院の受付を済ませ、受付の看護師に案内されて割り当てのベッドに到着した。パジャマに着替えベッドに座って母親と話していると、一人の看護師がやってきた。

初めまして、野村さんの担当になります寺島です。

ベッドの頭側に付けられたタグを見ると確かに「担当看護師:寺島」の文字があった。ところで、初めて寺島順子を見たときに、祐樹にはなんの感慨も浮かばなかった。なにせ翌日に控えた手術への不安の方が大きかったわけで、顔すらまともに見たかどうか記憶が定かではない。

・・・というわけで今日の夕食と明日の朝食は抜いてください。飲み物は夜までです。朝からはなにも採らないでくださいね。何かあったらそこのボタンでナースコールしてください。

反応の薄い祐樹の意思を確認するために、寺島が祐樹の顔を覗き込んできたため、祐樹は慌ててハイと答えたのを覚えている。その後、寺島は祐樹の母親と一言二言交わし、ナースセンターに戻っていった。

なかなかベッピンさんね。
そうかー。どうでもええわ。

明日に手術を控えた状態で、ぱっと見、年上の看護師のことなどどうでもよかった。手術は耳の裏を切り開き、鼓膜の横の穴の開いた骨の周りや真珠種の広がっている部分を削り、また一部の耳骨の再生を行うもので、顕微鏡を使ったかなり精密なものだと聞いていた。

手術台に登った時の祐樹は、もうどうにでもなれという気持ちだった。少なくとも死ぬようなものはない。最悪、右耳が聞こえなくなるだけだ。自分ではどうしようもないのだと腹をくくった。

そして全身麻酔用のマスクがかけられ、4つ数えるから大きく息を吸ってーの言葉に従い、1・2・3・・・の次の4の声を聴いた記憶はない。

祐樹に残っている次の記憶は、手術が終わってからの入院ベッドの上だ。幸いに全身麻酔後の頭痛も手術した場所の痛みもなく、尿道カテーテルのむずがゆさを除けば比較的快適だった。その尿道カテーテルも術後2日目の夜には外してもらえ3日目からは病院内をうろつくこともできた。

頭に包帯は巻いているものの4日目以降は不安も消え、普通の精神状態に戻ってきた。そうなると大学生である。俄然、若い女性である看護師たちに興味がわいてきた。祐樹はいくつかの病棟と階を回り、看護師を横目で眺めるのが日課になった。

祐樹の担当である寺島順子は日に二度、検診や検温で部屋にやってくるのだが、祐樹の母親が言ったように確かに可愛らしかった。年齢は祐樹よりもだいぶ上だと思われるので、可愛らしいという表現は、本当は適当ではないのかもしれない。
しかしやはり可愛らしいのだ。

いつも髪をひっつめてナース帽をかぶっているので顔はきりっとしているのだが、笑うとやや下膨れになりその顔は小島聖を連想させた。体は肉感的で、出るところと引っ込むところのメリハリが利いている。
きっと脱ぐと凄いんだろうと祐樹は想像した。

祐樹は寺島の検温時に二言三言話をするのが楽しみになっていった。だが絶対にエロい方向には話を持っていかなかった。もちろん、お尻を触ったりなど絶対にしない。

実は、となりの爺ちゃん患者などは、ぼけた振りをしてナースのお尻や胸を触ったりしており、後であれがこうだったこれがこうだったと患者同士で話していた。祐樹は爺さんすげーなとは思ったが、あれは年寄りにだけできる荒業だと諦めた。

若い祐樹は、およそ2週間の入院の間にナースに嫌われるのは怖かったし、またその所業を母親に言いつけられるのも怖かった。なので検温が終わり寺島が部屋から出て行くときにスカートの下にのびるふくらはぎをカーテンのこちら側から眺めるのが精一杯だった。
 
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2015/03/06

美人ナースに洗髪をしてもらうこの喜び



祐樹の入院から9日目、やっと頭の包帯を取る日がやってきた。

耳の傷は特に痛みもかゆみもなく、それは手術からの順調な回復を示していたので、祐樹はかなり安心していた。聴力がどの程度回復するかは分からないけど手術はまあ成功したのだ。これでやっと一般人の生活に戻れる。
祐樹はそう考え、残りの気楽な入院生活を楽しむ余裕が出ていた。

そして頭の包帯を取るこの日、久しぶりに水で頭を洗うことができるということを主治医から聞いた。これは勿論、自分で好きなように洗って良い訳ではない。耳へのカバーをかけた上で看護師さんが洗ってくれるということだった。
祐樹はもう抜群に嬉しかった。

手術のために髪を短く切ってはいたが、9日間も頭を洗えないというのは本当に地獄である。頭のかゆいところを掻けるのは、消毒のために包帯を取ってもらっている一瞬であって、それも治療の途中なので自分の都合で頭を掻き続けていいものでもない。人間は気がつかない間に頭を結構掻いているもので、包帯が邪魔をして自分の思い通りに頭を掻けないというのは本当にイライラするものだ。勿論、今は水を使わないドライシャンプーもあるにはあるのだが、祐樹の場合は、必要以上に耳の周りの筋肉を引っ張ってはいけないということでアルコールで頭を消毒するだけで、この日まで洗髪は見送られていた。

(ああ、もう思いっきり頭を掻きむしってもらおう)

祐樹はわくわくしていた。
そして午後3時。シャンプーにやってきたのは、あの寺島さんだった。
なんてラッキーなんだ。祐樹は見かけ上、平静を保ったが心は浮き浮きしていた。

寺島の案内で連れて行かれたのは患者用の入浴施設と別の入口の、専用のシャンプー室だった。へーこんな部屋があるんですねーなどと軽口を聞きながら、祐樹は部屋を見渡した。美容室のように仰向けに倒れる椅子が一つあり、祐樹はそこに座るように促された。

あんまり慣れてないから下手だったらごめんねー。

祐樹が椅子に腰掛けると寺島さんが水跳ね防止のカバーをかけてくれ、椅子をゆっくりと倒した。寺島さんは祐樹の顔間近で手術跡に水がかからないよう耳カバーをかけてくれた。病院特有の消毒液の匂いに混ざって、寺島さんの化粧の香が匂った気がした。祐樹はそれだけでドキドキした。祐樹のドキドキに気がついたわけでもないだろうが、寺島さんが祐樹の顔にタオルをかけた。

シャンプー楽しみにしてたんですよ。マジでガシガシお願いします。
頑張るねー。

耳の傷にお湯がかからないように恐々と頭全体にシャワーが当てられた。頭皮がジンジンしてたまらない気持ちよさである。はあ~っとしみじみとため息が出た。

寺島さんが無言でシャンプーを頭全体に馴染ませてゆく。一週間以上溜まった頭の油のために泡はほとんどたたなかったようだ。寺島さんは軽く軽く優しく頭全体をこすり、お湯で全体をすすいだ。祐樹の頭の中では頭皮が膨れ、ぶわーっと浮き上がっていく想像が広がっていた。
ま、まさかこれで終わりじゃないよなと祐樹が焦っていると、寺島さんがシャンプーのヘッドを押している音が聞こえた。

それじゃあ頭を擦るから、かゆいところがあったら言ってね。
はい。先ず全体的にもう一度お願いします。
こう?
あー気持ち良いです。
うふふ
上の方も。あ、もう少し右です。
ここ?
そこ。あー。
気持ちいい?
気持ちいです。。。
うふふ
 
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2015/03/05

美人ナースのちょっと香る腋に思わず興奮して・・・勃起



もうちょっと、もうちょっと強く、ああ

他人に頭を洗ってもらうのは気持ちがいいものだ。ましてや母親のごとく優しく接してくれ、しかも可愛いくて自分が気に入っている女性となればそれは格別なものだった。寺島さんと二人きりの専用のシャンプー室で祐樹は甘えに甘えた。病院特有の消毒液の匂いがする少し湿った空気のこの部屋で、寺島はかれこれ10分は祐樹の頭と格闘していた。

じゃあ流すね。
あ、後ろ。首のところもお願いします。
あー。うん。そうね。

寺島が右手で祐樹の後ろ頭を抱え、左手で優しく首の後ろの髪の生え際あたりをこすり始めた。
その時、祐樹は気がついてしまった。

(あれ。これ今、俺、抱きかかえられてる。)

そうだ。
きっとこの体勢なら右の頬のそば、すぐのところに寺島さんの胸があるはず。
タオルで目隠しされている分、この想像は祐樹の中でどんどん膨らんでいった。
いやいやダメだ。こんなところでチンコを膨らましちゃいけない。
だってこれ見つかったら相当格好悪いぞ。
あ、でも寺島さんの匂いくらい嗅ぎたいな。

入院生活というのは不思議なもので、病院の真っ白な壁に囲まれていると不思議と性欲は薄くなっていく。あのナースが可愛い、このナースが可愛いという気持ちくらいは残るものの、チンコが膨らむほどの妄想というのはなかなかしなくなるのだ。それは自分が病人であるという自覚がそうさせるのかもしれないし、職員や医師の事務的な対応から自分が一患者に過ぎないと自覚させられるのかもしれないし、もしかしたら病院食には性欲減退の薬でも入っているのかもしれない。

とは言え、このシチュエーションは二度とあるものではない。
寺島の化粧品か香水の香りでも嗅ぐことができれば、夜、こっそり外来のトイレまで降りて、その芳香をネタに9日ぶりのオナニーに浸りたいと祐樹は考えた。祐樹は気がつかれない程度に頭を右に傾け、普通の呼吸を保ったまま、こっそりと寺島の体臭を嗅いだ。鼻に神経を集中させて息を吸い込んだとき、消毒液の匂いと共に祐樹の鼻に飛び込んできたのは、ほんのりと香るどぶの匂いだった。

えっ!っと思った祐樹は思わず鼻をスンスンと鳴らし、二度嗅ぎしてしまった。
一瞬、寺島の手の動きが止まった。

しっかりと神経を集中させて、祐樹の鼻孔が捕らえたその香りは、もちろんどぶの匂いではなかった。2日くらいお風呂に入らなかったときの自分の腋に、鉛筆の芯を擦りこみ、たまねぎのスライスをトッピングした香りと表現すればわりと近いだろうか。

寺島さん腋臭かあ。普段は分かんなかったなあ。軽い奴かな。この距離だもんな。
でも、今、思いっきり嗅いだから、気がつかれたと思って顔真っ赤にしてるかも。
ここで臭くないっすよってのも失礼だし。それほど嫌なにおいでもないし。

祐樹が頭の中で対応を考えていると、寺島の手が完全に止まった。

ちょっと待っててね。

祐樹の頭をカバーのかかった椅子の枕にゆっくりと戻すと、寺島がそばから離れていくのが分かった。シャッとカーテンの閉まる音が聞こえ、微かな衣擦れの音の後に、パリパリと何かの袋を破っている音が聞こえた。

制汗用のシートで腋拭いてるんだなあ。

タオルで目隠しをされ洗髪椅子の上に寝転がった状態で、祐樹はぼんやりと寺島順子のその姿を想像した。上半身だけナース服を脱ぎ、片腕を上げて、困ったような顔で自分の腋を確認しながら、制汗シートで腋をぬぐっているナース。コンプレックスかあ。きっとあるよなあ。と考えていると、不意に祐樹のペニスが反応を始めた。防水カバーの下から手を伸ばしこっそりと触ってみると、それはだぶだぶのパジャマであっても隠し切れないほどに怒張していた。
カンッと金属のゴミ箱がしまる音が響き、祐樹の足元の方から寺島が戻ってくるのが雰囲気で分かった。

やばい。これ気づかれるよ。。。
 

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2015/03/04

俺、あの、腋の匂い嫌いじゃないです。



ごめんね。続きしようね。

再び祐樹の後ろ頭が、寺島の右手で抱えられ、左手で首の後ろの洗髪が始まった。
何事もなかったようにことが進んでいくので、股間の勃起に気づかれたかどうか、祐樹には確認のしようもなかった。
祐樹は再びこっそりと寺島の腋のにおいを嗅いでみたが、デオドラントの香りがするだけだった。

(ああ、やっぱり拭いてきたんだなあ。)

と祐樹は思った。ペニスがますます膨らみパンツのラインに引っかかって痛いくらいになっていた。
その間に寺島はシャワーのノズルを取り、起用に首のふちを流していった。

はい。後ろ終わり。あとかゆいとこない?
あの。
うん。
俺、あの、匂い嫌いじゃないです。
・・・

二人きりのシャワー室を沈黙が支配し、出しっぱなしの水の音だけが響いた。
しまった。脈絡もなくなんということを言ってしまったのだと祐樹は後悔した。
別に黙っていても良かったのだ。わざわざ言う必要なんかなかったのだ。
あーしまった。出した言葉は引っ込められない。困った。

あの。
あ、、うん。かゆいところある?
え、ああ。もうちょっと、もう一回、全体を洗って欲しくて。
うん。分かった。

またシャンプーのノズルを押す音がして、寺島の掌全体で祐樹の頭にシャンプーが塗られた。
わしわしと髪にシャンプーの泡が広がっていく感触がわかった。

ありがとう

小さな声が祐樹の左耳の傍で聞こえ、すぐにデオドラントの香りが祐樹の鼻をくすぐった。
あれ。さっき頭を洗っていたときはもっと角度的に上の方、洗面台の方に頭があったはずなのに。
なにか角度的におかしいと祐樹は思った。その時、ナース服か何かが祐樹の鼻に当たった。
あ、これ覆いかぶさるように無理な体勢で洗ってる? と祐樹は思った。
心なしか寺島の鼻息もフンフンと先ほどと違うリズムを刻んでおり、荒いように感じられた。
祐樹は恐る恐る防水カバーから右手を外に出し、周りをまさぐった。
その右手は恐らく寺島の右ひざの少し上に当たり、祐樹は掌でそれを触った。
少しずつ右手を上に上げていく。

それ以上はダメよ。

そんなにきつい言い方でもなく、爺ちゃん患者をたしなめる程度の言い方で寺島が遮った。
ただ祐樹の手を跳ね除けるでもなく相変わらずシャンプーは続き、ついでに祐樹の鼻と唇は恐らく脇に近い体のどこかの部分で覆われた。
随分無理な体勢で洗髪を続けているのであろう、寺島の体は火照り、また汗の匂いが微かにし始めた。
祐樹は舌を出して、どこか分からない体の部分をぺろりと舐めてみたが、残念ながら布だった。

その内、シャワーのコックをひねる音が聞こえ祐樹の頭からシャンプーが綺麗に流し落とされた。
髪からある程度水気を切ったところで、はい終了と寺島の素に戻った声が聞こえた。
 
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