玲奈は桜井の健啖ぶりに舌を巻いていた。
桜井はとにかく食べる。そしてぐいぐい飲む。それは見ていて気持ちのいいものだった。
料理が届く。二人で取り分ける。桜井がバクバク食べる。次の料理が届く。前の取り分けた残りを桜井が口に放り込む。
まるで少年だ。名前はなんと言ったか、こんなに嬉しそうに給食を食べる男の子が小学校の時にいた。
玲奈は味見程度に沢山の種類の料理を試したかったので、桜井の健啖ぶりはむしろ好都合だった。
しかも、桜井の食べ方は綺麗で嫌な感じがしなかったし、話をする時間もちゃんとあった。
ワインが2本目に入った頃、頼みすぎだと思った料理は既に片付き、会話はループして何度目かの同じ話になった。
玲奈も桜井もワインが進んだせいか、それとも打ち解けたせいか、敬語が怪しくなっていた。
玲奈はそれすら快く思っていた。
いや、今回は本当に吉川さんがいらしたので、助かりました。
ホテルとの交渉とか桜井さんが全部動いてくれたから、私のほうが感謝です。
ああ、そこは課長が忙しい身ですから。僕がやるしかなかったわけです。
たしかに、課長はやりませんからね(笑)
僕は部内の人間関係をまだつかみきってませんから。そのフォローが・・・
そんなことはないでしょうけど。
部内については吉川さんから話をしてもらって流れができたんです。
私は長いですからねー。
僕は新人で・・・あ、いや、そういう意味じゃなくて。
すみませんとおどけた様に小さくなって桜井が謝った。
玲奈は手を振り笑って許したが、桜井は慌てて話題を変えてきた。
長いって言っても玲奈さん、もうすぐ結婚じゃないですか。
社内の話はどうしても湿りがちになると思ったのか、話題は玲奈の結婚についてだった。
しかし、ほんのさっきまで吉川さんと呼んでいたのに、桜井は玲奈と呼んだことに気がついていないようだ。
玲奈さん?
ああ、すみません。吉川さんです。吉川さん。
なんかさらっと出てきたけど(笑)
すみません。
裏で密かに呼んでた?
会社だとセクハラって言われそうですね。
まあ、会社だと下の名前で呼ぶことはしないよねー。
でも玲奈さんは玲奈さんの方がしっくり来るんです。
開き直ったのか桜井は悪びれずに言った。
いたずらを見つけられた子どもが拗ねているようで、それはそれでなんだか可愛かった。
じゃあ私も今日は”翔君”って呼ぼうか。
あーそれよく聞きますけどねえ。僕、高志ですから。
タカシ? いやそれはちょっとなんだか恥ずかしいなあ。
一回、言ってみてくださいよー。玲奈さん。
タカシ? いや、なんか弟みたいじゃない。
玲奈は桜井の好意を感じていた。幹事という大役を二人でこなした吊橋効果かもしれない。
玲奈も桜井に好意を感じ、なんだかんだとデートのような時間が過ぎていった。
- 関連記事
-
>> どのストーリーでもあなたの琴線に触れたなら、1クリック応援をよろしくお願いします。
みんなが読んでる話題の情報
- 女性の性欲発動スイッチSMS
- 美人専用逆ナンパシークレッツ ~ たくさんの美人が向こうから勝手にあなたにすり寄ってくるこの魔法を知りたくはないのですか? ~
- 唯一無二の女になるための5stepのエッセンス~九州恋愛コンサルタント内野舞Presence~
コメント