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2016/03/21

玲奈はこの1年の間、揺らめいた自分の人生を振り返り始めた



5月の夜、吉川玲奈は東西線に揺られていた。
金曜の夜だというのに車内はさして混雑もしておらず、玲奈は茅場町から席に座ることができた。
昨年末に32歳の誕生日を迎え、来月にはジューンブライドを迎える玲奈であったが、今日は最後の楽しみとして年下の桜井高志と日本橋のワインバルで魚介とワインを楽しんできたのだった。
楽しかった・・・
これで思い残すことはない。玲奈は耳にイヤホンをかけ、スマホから選曲を行うと、体を縮めて小さくうつむき、更に目を閉じて音楽に集中しようとした。
ふと鼻の奥から粘液が垂れてきたような気がして軽く咳き込むと、玲奈の鼻腔に青臭い漂白剤のような香りが広がった。
暖かな電車の揺れの中で今夜の余韻を楽しもうとしていた玲奈だったが、その淫靡な香りは否応なしに玲奈の思考を乱した。
自分で選んだんだから問題ない。問題ない・・・
玲奈はこの1年の間、揺らめいた自分の人生を振り返り始めた。

・・・

年間売上6兆円。単独では3万人、連結では19万人の社員を抱える日本を代表する大企業。
玲奈は一般職とはいえ、その日本を代表する企業の本社ビルに勤めている。
東京湾を見下ろす形で立つ本社ビルは地上40階、地下3階の立派なもので、玲奈の机は31階のフロア、社会インフラ事業の一部門にあった。
2つのタワーを繋いだ形のビルの構造上、全てを見渡すことは出来ないが、かつては31階のフロアだけでも100人以上の人間が働いていたはずだ。
それが今や、部門の統廃合や離散集合が繰り返され半数近くになってしまっていた。
ある者は希望退職に応じて去って行き、ある者は自主的に退職し、またある者は子会社に出向を命じられ去ってしまっていた。

それもこれも去年の夏、会社の粉飾決算が露呈してしまったためだ。
日本を代表する企業の粉飾決算。各紙とも一面を飾るビッグニュースだった。

その記事が新聞の紙面をにぎわせ始めた頃、玲奈にはまだ粉飾決算というものがどれほど悪いものか分からなかった。
だが周りの賢い総合職の立ち話を聞いていると、まず証券取引所での株の取引停止は免れない。
次に銀行から取引停止、融資の引き揚げが宣言され、資金がショートして会社の倒産は免れないだろうということであった。
大方の人間の話では、もって3ヶ月であろうという予想にも関わらず、奇跡的に会社は生き延びていた。

Too Big To Fail かつてのダイエーがそうであったように、この会社は大きすぎて潰せないという国の意向から、様々な公的支援、資金が投入されたのだ。
そのため、少なくとも玲奈の日々の業務には変わりはなかった。
しかしながら会社自体が無傷というわけにはいかない。
先に書いたように部や課の統廃合や人的整理が頻繁に行われ、役職が消えたり人手が足りなくなった部門には改めて若手が起用されるなど、かなりダイナミックな人事が行われた。

そんな中、28歳の桜井高志が主任として異例の若さで玲奈の部門にやってきたのは昨年秋のことであった。
 
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