銀座だと僕の給料じゃ厳しいですと言う桜井と連れられて日本橋まで移動した。
日本橋は高田馬場方向に戻る桜井にも、西船橋方向に戻る玲奈にも都合が良かったからだ。
桜井が案内してくれたのは、大通りから一本路地に入った隠れ家的なワインバルだった。
金曜の21時台のことである。
隠れ家的といっても店内はそれなりに混んでいた。
桜井は店員に来店を告げ、二言三言会話を交わすと、二人は半洞窟のように区切られたテーブルに案内された。
どうも桜井は馴染みのようである。
仕事の帰りにたまに来るんです、ここ。いつもはカウンターですけどね。
玲奈が席に着くと、桜井がにこやかに言いながら席に着いた。
狭いテーブルに向かい合わせの状態である。
さてと。吉川さんはワインは大丈夫ですか。
ええ。お酒はなんでもいけます(笑)
頼もしいですね(笑) じゃあ、ハウスワインも良いですけどフルボトルを入れちゃいましょう。赤と白は?
お任せします。
じゃあ白かな。あとは、苦手な食べ物とかありますか。
大体なんでも食べられるほうです。
じゃあ適当に頼むんで、足りなかったら後で追加で良いですか。
はい。初めてのお店ですから、桜井さんにお任せでお願いします。
分かりました。じゃあ美味しいものをご紹介しないと。
桜井が洞窟の入口から手を出し店員に声をかけると、黒い前掛けをした南欧系の店員が飛んでやってきた。
桜井はメニューを片手に一つ一つ指差しながら、たまに店員の顔も確認しつつてきぱきと注文を進めていった。
えーっとワインはこれ。フルボトルで。OK? それから生ハムの盛合せとサーモンカルパッチョ。スパニッシュオムレツに、手羽先のフリット。あとはビスマルクピッツァと魚介のパエリア。こんなもんかな。
え、そんなに食べられませんよ。
大丈夫、大丈夫。
注文を終えるとワインは直ぐにやってきた。テーブルにグラスが置かれ、一杯目は店員が注いでくれた。
後はワインクーラーに入れておくので勝手にやってくれというスタイルのようだ。
ふーんと銀のワインクーラーを眺めていると桜井がグラスを手に取ったので、玲奈も慌ててグラスに手を伸ばした。
それじゃあ、無事に幹事を務めあげたことに。
務めあげたことに。
カンパーイ
軽くグラスを合わせた。コーンというワイングラス独特の深みのある音が響く。
玲奈は軽くワインを口に含むと、喉に流し込んだ。
よく冷えた淡い琥珀の液体が喉を滑り落ちていく感触が心地よかった。
あー。これ美味しい。
でしょう。当たりもきつくなくてスッキリと喉に流れ込んでいく感じ。でしょ。
確かに。若そうなワインだがフルーティというほど甘くもなく、しかし喉を滑り落ちた後に鼻を抜けてくる爽やかな香りが鮮烈で、これならいくらでも飲めそうだ。
きっと舌に残った肉や魚の味もさっぱりと洗い流し、次の一口へと導いてくれるだろう。
玲奈は桜井のチョイスに感嘆した。
玲奈の驚きの表情に満足したのか、桜井も饒舌に話し始めた。
楽しい打上げになりそうな予感を感じさせた一杯だった。
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