龍男は腕で頭をカバーし、戦闘態勢でもって部屋に飛び込んだ。その途端に嬌声が2度あがる。
たっちゃーん!
なんでも来い!と腕の隙間から声の方を見ると、セナがソファに座ってテレビを見ていた。
その顔はなんだかニコニコしてる。
(は? 男は?)
と、戦闘態勢を崩さないまま、素早くあたりを見回すと、やはり腕の隙間から件の男がベッドに寝ているのが見えた。しかも大の字で寝っ転がってる。ちんこも出したままとは相当の大物だ。
龍男はいったん戦闘態勢を解き、近くにあったガラスの重い灰皿を手に取ると、男の眠るベッドへと向かった。
灰皿を左手に持ち替え、いつでも殴れるようにすると、ぐっすり寝ているおっさんの頬を右手ではたき上げる。
ぺっしーん!鋭い音が部屋にこだました。
おう!おっさん、起きんかい!
頬をはたいた音よりも大きな怒声が部屋に響いた。男の耳元に向かって。もちろん虚勢だ。セナが固まるのが右目の端に入る。しかし。おっさんはまったく起きる風がない。一瞬、しゃっくりのような大きな呼吸が止まったかと思うと、再び何事もなかったかのように、そのしゃっくりが混ざった規則的な呼吸が繰り返されるだけだった。
(あ、これあかんぞ。)
龍男は男の反応がなかったことで、急に冷静になった。この呼吸には覚えがある。ガンで死んだ親父の最後だ。
意識も何もなくなった人間が、本当の最後の最後に行う、ただただ生命を維持するための動き。呼吸中枢の反応だけで繰り返されるしゃっくりのような呼吸。親父のそれは今も耳に残っている。どうにも体に回らない酸素を、それでも少しでも多く取り入れようと、鼻が詰まろうが、喉が詰まろうが、酸素だけは取り入れようという反応から発せられるしゃっくりににた呼吸。龍男の耳にはたまらなかった。
おい!
思わずセナの方を向いていった。
いつからこんな状態だ。このしゃっくり。しゃっくりだ。
さっきだょ。たっちゃんが入ってくるちょっと前かな?
その前は!その前。
最初はすごいイビキかいててー、静かになってー、、、
(イビキ、イビキ、、、脳卒中か。)
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