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2016/10/15

「線虫」最終章 産卵の回(4)



おい!

ついつい言葉を強く言ってしまうのが龍男の悪いところだ。顔も相当怖くなっているのだろう。セナのおびえた目にそれを感じた龍男は言い直した。

ごめん。よし。分かった。セナちゃん。えっとね。じゃあとりあえず服着よっ。
えー。そのおじさん起こして、ぼこぼこにするんじゃないのー?

龍男はセナの言葉に詰まったが、極力冷静に伝えようとした。

このおじさん、ダメだ。もうすぐ死んじゃうよ。たぶん。
えーマジーサイアクー。中出しされたのにー。
うん。分かった。服着て。早くここから離れよう。
中出しされたのにー。もう。サイアクー。

セナはやっとソファから起き上がり、クローゼットにかかっていたキャミソールを着始めた。龍男は早くこの場を離れたくてイライラしていたが、言葉の割にセナがニコニコしているのが気になったので、かまをかけてみた。

あのさ。セナちゃん。金抜いた?
えー抜いてないよ。
(これ絶対に嘘だ)抜いたんでしょ。
信じてくれないのー?たっちゃんサイアクー。
(は?なにこいつ)おい、こら。抜いたんだろ。
・・・
なんぼ抜いた。あ、この財布か。

龍男は枕元のティッシュの横に転がっていた財布を拾い上げ、札を数えた。

ひいふうみぃまだあるな。
15マン・・

遅れてセナが白状した。セナには最初に3万程度払っているはずだ。結構金持ってたんだなこのおっさんと思いながら龍男はシーツで紙幣と財布をぬぐい、元の位置に戻した。財布の中身を全部取っていないのは、セナもなかなか賢い。ただの脳卒中ならいいが、これが物取りとなると後々面倒だ。
龍男はトイレに行ってトイレットペーパーを大量に取り、これを水に浸して、自分が触ったと思われるところをすべて拭いていった。そしてセナが服を着替え終えるとこういった。

いいか。セナ。このおじさんは脳の血管が詰まったか爆発したかでもうすぐ死ぬんだ。たぶん。
それサイアクじゃーん。
うん。最悪。そう。最悪なんだけど、でも、セナちゃんは悪いことしてないから、普通にエレベータでホテルから出て行って。
えー。怖くない? 中出しはー?
セナちゃん。15万抜いたんでしょ。それでチャラ。
えーそれサイ・・
や か ま し い。
・・・
帰ってゆっくり話すから、まずはホテルを出ようか。俺は別で出るから。分かった? できる? ホテル出てちょっといったところで車止めてるから。
・・・
返事しろ。こら。わかった?

セナは龍男の勢いに押されて、コクコクと頷いた。なんだこの女。まったく。
そんなこんなで金本龍男はなんとか窮地を乗り切った。ホテルの爺に状況を説明して、速攻で救急車を呼べと伝えるのも忘れなかった。
残る問題はアホのセナに万が一捜査の手が伸びて来た時だ。セナ、実際の名前も知らないが、こいつの手が後ろに回ったときに、組の管理売春にまで捜査が及ばないようにすること。俺の目的はこの一点。とは言え、こいつが大変そうだ。

(はあ~、兄貴に報告しなきゃな)

セナを待つ車の中で、龍男は胃が痛くなるのを感じた。
 
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