女性だってセックスを楽しみたい時期があると思うんだ。淫乱とかそんなのじゃなくね。
いや悪いことじゃないですよ、ホント。
そんなこんなで吹っ切れた僕は、気が狂ったように遊び始めた。
丁度その頃、カウンターバーとガソリンスタンドでのバイトを始めたこともあって、相手には困らなかったよ。
「今度遊びに行こう」から始まって「そんじゃ、今日飲みに行く?」、「ハイ、ご馳走様」みたいな感じで、
今になって思うと若い時ってのは何であんなに簡単だったんだろう。
まあ、相手の子も学生だったり親元から離れて一人暮しだったりする気軽さがあるとは思うけど、
結局の処、お互いに若いってことだね。女性も興味半分でセックスを楽しみたい時期ってのがあるんだと思う。
そんな一人が千明だ。千明はうちの大学の近くの4年生女子大に通っていて、
僕がバイトをはじめた"Bar BUBBLE"の常連だった。
なかなか可愛らしい人だったけど、彼女は僕がバイトに入る前からの常連さんだったし、
店のオーナーとも仲が良かったんで、
僕はあくまでバイトに徹した接し方をしていた。
まあ、彼女のことは丁度お店でのお姉さん的な感じと思えば良いだろう。
僕らバイト同士の集まりにもよく顔を出していたしね。
そんな気軽さで「はるちゃん、悪いけど引越し手伝ってよ」と言われた時は
「いいよー、その代わり飯食わせてねー」ってな返事をしたと思う。
引越しは、千明が4年生になるかならないかの春だったかな。
荷物が増えてきたので広いアパートに移るのだと説明を受けた。
引越し当日、千明の家に行くのは初めてのことだったので時間よりちょっとだけ遅れた。
他のバイト連中はもう先に着いてるんだろうなぁと考えながら、なんとか千明の家にたどり着くと、
そこには大家さんから借りたという軽トラックが一台ちょこんとあるだけで、千明以外に誰も居なかった。
しかも荷物が増えたと言うのは本当で、雑多なものから大きなタンスまで、半端なく大量だった。
「うわー、これ俺一人で運ぶんかい!」と思ったが、飯を食わせてもらう者の悲しさ、
千明も手伝って若さと根性でなんとか引越しを乗りきった。
「はるちゃんさ、折角だから新しい家で食事して行きなよ」
新居も片付きある程度落ち着いたところで千明が言った。
別に飯なんかどうでも良いくらいに疲れてたんだけど、やっぱ手料理の誘惑には勝てなかった。
「あたし買い物行ってくるから、風呂入って汚れ落としてていーよ」なんて言われる。
勿論、この時点でもバイトのはるちゃんな僕は「へーい」かなんか返事をして、千明が出て行った後にひと風呂浴びた。
風呂から上がって、テレビの配線をつなぎ適当なクッションに座って、ゴールデン番組を見てると千明が買い物から帰ってきた。
「ビールとシャンパンとワインを買って来たからね。ビール飲んでて」
「いやー、僕、帰れなくなりますから」
「良いじゃん、泊まってけば」
「そっすか?」
「うん、うん」
でも、この時点でもバイトのはるちゃんだった僕。だってそうでしょ、まさかね。
食卓に並んだのはハンバーグとサラダだけだったが、千明の料理は美味かった。
僕が残ったワインを飲んでる間に千明はキッチンで片付けを済ませ、そのままお風呂に入ったようだ。
千明が風呂を上がったのも音で分かった。
擦りガラス状のキッチンの扉は閉まっていたが、紳士的でバイト君な僕はそっちを見ないようテレビに集中してた。
その時扉が音を立てて開き、部屋の明かりが消された。
千明が消したんだ。
扉を開けて千明が部屋に入ってきた。
バスタオルを巻いた千明の姿が、テレビからの光を受けてボーっと青く浮かび上がってる。
「へへ…」千明が笑った。ことここに到って、僕も流石にバイトではいられなくなった。
僕のいるクッションに、無言で千明を呼び寄せる。千明はすぐクッションの傍に滑り込んできた。
濡れた髪が腕にかかった。すぐさま横から覆い被さる僕。
細いと思っていた千明の体は意外と豊満だった。
素敵だ。
頭と体の一部に血の集まった僕にはテクニックもくそもなかったが、
千明は手だけでも絨毯が濡れてしまうんじゃないかというぐらいの愛液を垂れ流した。
ただセックス自体は単調なもので、あんまり溺れるというタイプじゃなかったな。
その時、まさかこんな展開になると思ってなかった僕はコンドームを持っていなかった。
結局、最後は千明のお腹に大量放出したんだけど、
千明が起き上がった拍子にそれがこぼれて絨毯にシミを付けてしまった。
スミマセン君の新居を一番最初に汚したのは僕です。
いや、もしくは君の愛液かも。
その後、僕らがセックスすることはなかった。
彼女は卒業するまでカウンターバーの常連だったけど、店に来た時に僕を特別扱いすることはなく、
彼女はバイトの誰にも優しく接した。
そうして僕にとってはただのねーさん的な存在になっていくのだが、今思うと千明は…
バイト君みんなの"お姉さん"だったのかもしれないね。
そう、そういう意味。
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