好美は先ほど手に取って持ってきた本を開き、指で字面を追っている風を装ったが、とても勉強に集中どころではなくなった。
(やばい、やばいぞ)
さっきのは僕が見ようと思ったわけじゃない。
まちがいなく不可抗力だ。
まさか覗きあつかいなんかされないよな。
あの白いような、黄色いような三角ゾーン…
あ、いや、僕が見ようとしたんじゃないんだ。
たまたま向こうがしゃがんだから。
とりとめのない思いが頭の中を駆け巡った。
好美はたまに本から目を上げて、こっそりとあたりを窺うように見渡した。
特に騒いでいる人間がいる様には見えない。
向かいの席では同じく専門学生だろうか、私服の若い男性が厚手の本を読んでいる。
たまに職員が返却された本をかごに入れて書架に戻しに来るが、自分に向かってやってくる人間はいないようだ。
恐る恐る先ほどの医療介護の本棚にも目をやるが、いくつかの棚に阻まれてそちらの状況は見えなかった。
好美は30分もそうしていたが、意を決して動くことにした。
自分が持ってきたノートや筆記用具を鞄に詰めて帰ることにしたのだ。
もう、万が一呼び止められたらダッシュで逃げるしかない。
さっき持ってきた書籍を棚に戻しに行く勇気はない。
これはボールペン一本とともに机に放置することにした。
好美はさりげなく立ち上がり、鞄を肩にかけると、医療介護の棚からできるだけ離れた遠回りなルートを出口に向かって進んだ。
図書館の出口まで半分も進んだところで、医療介護の棚の反対側がホール越しに見えるところに出てきた。
好美は最初は歩きながらチラチラとそちらを覗き見ていたのだが、先ほどのパンチラ女性と思わしき人がオープンスペースで普通に本を読んでいるを認めると急に安心した。
そこで立ち止り、携帯を取り出して画面を確認するふりをしながら、画面と女性を交互に眺めた。
(大丈夫そうだ。)
好美は深く安どの息をついて、先ほどの自分の席まで戻ると、ボールペンを鞄にしまい、書籍を手に取って、医療介護の棚へと向かった。
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