沈黙の後、「車で送るわ」とピンクのコートの女が言って後部座席から出ていった。
女は運転席に乗り込むと「なにしてるの。助手席に移りなさい。」と命令してきた。
名前も電話番号も住所も押さえられ、逃げるわけにもいかない好美は、素直に助手席に移るしかなかった。
あの、送るって…津田沼なんでしょ。京葉で送るわよ。
いや。あの、親に会う気なんですか?
女が無言で車を走らせ始めた。
パニック状態の好美はもう何を聞いて良いのか分からなかった。
それでも言わずにはいられない。
本当に親は困るんです。許してください。
警察もでしょ? 犯罪だもんね。
また沈黙が続いた。その沈黙を破ったのは女の方からだった。
数週間前からあなたの行動を見てたわ。えっ?
いつもあの棚から覗いてた。よく初めてなんて言えたわね。
…
何か言うことないの。
すみません。
また沈黙が続いた。
原木インターで降りるけど、それまでにどうするのか考えなさい。
どうするって…
あなたに何ができるかってことよ。
僕にはなにも…
考えなさい。
その後は何を言っても女は答えてくれなくなった。
パニック状態の好美の頭の中を、過去に覗いた女たちの姿が現れては消えていった。もう何も考えられない。
いよいよ原木ICを降り、一般道に出たところで女は路肩に車を停めた。
それで結果は出たの? 杉本君。分かりません。何でもします。本当になんでも。
ふーん。なんでも?
はい。お願いです。言わないでください。
なんでもかー。じゃあ杉本君は私の奴隷。
奴隷ですか?
そう。奴隷。嫌だって言えない人。
奴隷でもいいです。
あらそう。
言わないでもらえるなら。
あなたなかなか可愛いから、じゃあ早速仕事ね。
まだ手が震える好美は混乱していた。
何か助けを求めるべく見上げた女の顔は、心なしか上気しているように思えた。
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