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2017/03/07

覗きの反省と後悔、涙のドライブ



沈黙の後、「車で送るわ」とピンクのコートの女が言って後部座席から出ていった。
女は運転席に乗り込むと「なにしてるの。助手席に移りなさい。」と命令してきた。
名前も電話番号も住所も押さえられ、逃げるわけにもいかない好美は、素直に助手席に移るしかなかった。

あの、送るって…
津田沼なんでしょ。京葉で送るわよ。
いや。あの、親に会う気なんですか?

女が無言で車を走らせ始めた。
パニック状態の好美はもう何を聞いて良いのか分からなかった。
それでも言わずにはいられない。

本当に親は困るんです。許してください。
警察もでしょ? 犯罪だもんね。

また沈黙が続いた。その沈黙を破ったのは女の方からだった。

数週間前からあなたの行動を見てたわ。
えっ?
いつもあの棚から覗いてた。よく初めてなんて言えたわね。

何か言うことないの。
すみません。

また沈黙が続いた。

原木インターで降りるけど、それまでにどうするのか考えなさい。
どうするって…
あなたに何ができるかってことよ。
僕にはなにも…
考えなさい。

その後は何を言っても女は答えてくれなくなった。
パニック状態の好美の頭の中を、過去に覗いた女たちの姿が現れては消えていった。
もう何も考えられない。
いよいよ原木ICを降り、一般道に出たところで女は路肩に車を停めた。

それで結果は出たの? 杉本君。
分かりません。何でもします。本当になんでも。
ふーん。なんでも?
はい。お願いです。言わないでください。
なんでもかー。じゃあ杉本君は私の奴隷。
奴隷ですか?
そう。奴隷。嫌だって言えない人。
奴隷でもいいです。
あらそう。
言わないでもらえるなら。
あなたなかなか可愛いから、じゃあ早速仕事ね。

まだ手が震える好美は混乱していた。
何か助けを求めるべく見上げた女の顔は、心なしか上気しているように思えた。
 
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