江波隆介が同じ棟の医師たちとの連絡を兼ねた昼食会を終え、自分の執務室に戻るとプライベートの携帯の呼び出し音が鳴っていた。
胸ポケットに入れた仕事用のガラケーが昼夜を問わずに鳴るのはいつものことだが、お昼にプライベートの携帯が鳴るのは珍しい。
遅れてやってきたインターンの木谷美和子を制し「ちょっとプライベートだ。待っててくれ。」と入口に待たせた。
ロッカーを開け、背広の胸ポケットから携帯を引き抜く。
液晶に示された番号表示を見ると、電話をしてきた相手は同級生の新谷幹夫だった。思わず懐かしい気持ちがわく。
新谷幹夫は高校時代によく一緒に遊んだ、良いことも悪いこともエロイことも一緒に楽しんだ仲だ。
奴と俺はともに勉強はできるタイプだった。奴は経済に進み、俺は親の勧めもあって医学の道に進んだ。
ずいぶん時間は空いたが、昨年の同窓会で再開し、確かその時に電話番号を交換したはずだ。
ちょっとがらっぱちなところは変わってなかったが、相変わらず憎めない男だった。
なんだろう。東京に居るとは言っていたが、今頃。珍しいな。
江波は懐かしい気持ちをいったんリセットし、努めて冷静であろうとした。
自分のように医師をしているとたまにトンデモナイ申し出がある。そういう申し出はたいてい一本の電話から始まることが多いのだ。
知り合いだからどうにかして欲しい、身内なのだからどうにかして欲しいと、トンデモナイ申し出を押し付けてくる輩は後を絶たない。
情に流されれば仕事を誤る。医師である自分は常に冷静でなければなない。
一瞬でそれらを判断すると江波隆介は通話と表示された画面上の緑のボタンを押した。
はい。江波ですが。
あ、江波か、俺だ。あ、いや、同級生の新谷です。
うん。分かるよ新谷。久しぶり。
あ、お久しぶりです。
どうした、また同窓会のお誘いかい?
いや、それがちょっとお願い事があってな。
(やっぱりな。久しぶりの電話に良いことはない。)
どうした?
あ、いや。お前こそどうした。
ちょっと体の調子がおかしくてな。それでお前に見て欲しい。
ふむ。医者には行ったのか。
行った。というか行ったばかりだ。
それならば俺の出番はないだろう?
それがうまく話が伝わらないんだよ。
どういうことだ。俺の専門は脳神経外科だが。
専門はちょっと違うかもしれないが…
どういう感じなんだ。その、、、症状は?
うん。近いといえば頭がぼうっとする。あと勃起が止まらない。
えーっと。どこを受けた。つまり診察科は。
泌尿器科だ。
性病の可能性があるのか?
ある。
(ダメだこいつは…)
電話口を抑えてため息を漏らした。木谷君を部屋に入れなくて正解だったようだ。
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